日本の「おいしい!」をさまざまな切り口でお届けしていきます。

2018年2月21日

「国産」に精通する7人のFANバサダーが順番に、おいしい国産情報を紹介しています。

常識を打ち破る「ウェルカムライス」の魅力

美味しいご飯を出す店が増えている。炊きたてで輝くご飯を出す店が増えている。
日本人なら誰しも、あの炊きあがりの光景には弱いことだろう。
しかしこの店ほど、ご飯に注力している店はないのではないだろうか。
何しろご飯は、締めとしても出るけど、一番最初に出されるのである。
ウエルカムライスである。前菜がご飯なのある。


常識を打ち破るこの店は、店主小柳津大介おやいづだいすけ氏率いる、代々木上原「おこん」という。


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代々木上原「おこん」で用意される炊きたてのご飯
炊きたてのご飯は2種類用意され、写真奥が、山形県南陽市の青木功樹さんが作ったミルキー・クィーンを、錦糸町の米屋「亀太商店」が精米し、文化鍋で炊いたご飯である。


文化鍋で炊いた理由は、米が締まって、シャープな味になる為、柔らかい甘味を持つこの米を活かすからだという。


ううむ。この時点で、かなりの米への偏愛へんあいではないか。


写真の手前が、南魚沼市塩沢町の米作り名人関智晴さんが作ったコシヒカリを、静岡県沼津「米のはせがわ」の長谷川明生さんが、手作業で一粒ずつ選米したものを土鍋で炊いたご飯である。

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「手作業で一粒ずつ選米」されたご飯

今簡単に書いたが、「手作業で一粒ずつ選米」である。
どれだけ労力がかかることか。
小柳津さんもさることながら、米屋の長谷川さんも、並々ならぬ米への愛がある。

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ハツシモ、ひゃくまん穀、にこまる、いちばん星のブレンド、2.3mm仕上げ

「では味の濃い釜の中心ではなく端から食べてもらいましょう」と、よそった2種類のご飯は輝き、「早く食べようよ」と誘いかける。 
 コシヒカリは、箸で持ち上げた時は一致団結しているのだが、口の中に入ると、はらりと散る。
米一粒一粒が、「私っておいしい?」と尋ねてくる。
これが選米の効果か。米の仕事の格が違うということか。そして甘みに品があって、いつまでも口に残る。余韻が長い。
「選米するとむらなく炊け、舌の上でのばらけ方が綺麗」。そう小柳津さんが言う。確かにそうである。
口の中で米が生き生きと舞っている。
食べた後もしばらく米のおいしさに酔い、うっとりとなってしまう米である。


一方のミルキークイーンは、歯を押し返すようなもっちりとした弾力があって、香りが甘い。
噛めば米の甘みがじっとりと押し寄せてくる。
歯の間でくんずほぐれつもつれあう、元気な米である。
愛情をかけて育てられた生物に共通する、勢いがある。
続いて釜の真ん中を食べると、味が濃い。
噛みしめがいがあるご飯である。


ここで小柳津さんのすすめに従って、燗酒かんざけと合わせて見た。


ああ。お酒と出逢って、さらに甘みが膨らみ色気が出て、後から湧き出るようにうま味が出てくるではないか。
もう後先考えず炊きたての米を一心に食べる。食べながら、お腹が空いていく米なのでもある。結局は、二人で4合の米を食べてしまった。
しかし食後は軽い。その後いただいた刺身も、ふんわりと崩れる、ほの甘い太刀魚たちうおの塩焼きもいただいて、さあ、いよいよ締めのご飯である。

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ほの甘い太刀魚の塩焼き

こちらは「米のはせがわ」長谷川さんが特別にブレンドし、選米した、「ハツシモ、ひゃくまん穀、にこまる、いちばん星のブレンド、2.3mm仕上げ」である。
もうレベルが高すぎて、よくわからないが、釜の蓋を開けると、甘い湯気とともに、光り輝くご飯があらわれた。
一粒一粒がこちらに向かってファイティングポーズをとっている。
たまらず口にすれば、はらりとほどけて、甘い香りが鼻に抜ける。
噛むほどに甘みが増していく、いつまでも噛んでいたいご飯である。


海苔で巻けば、海苔の甘味と一体化し。塩をかければ甘みが際立って箸が止まらなくなる。
歯が一粒一粒の米を感じている。米を食べる喜びに打ち震える。


最後はお湯をかけて、湯漬ゆづけである。


ザブザブッと掻きこめば、典雅な甘味が広がって、ふくよかな気持ちになる。
農家、米屋、飲食店。三者が手を結んで我々へ幸せを送り届ける。
それはまた、日本という国の尊さを会得えとくすることなのだ。

今月のFANバサダー
マッキー牧元

1955年東京出身。立教大学卒。
㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。
年間600食ほど全国、海外を食べ歩き、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。
著書多数。最新刊は「出世酒場〜ビジネスの極意は酒場で盗め」集英社刊。