食べよう国産!はフード・アクション・ニッポンが運営しています。
logo_fan

おいしい国産情報が探せる・見つかる

日本の「おいしい!」をさまざまな切り口でお届けしていきます。

2016年1月15日

発掘!地域のブランド食材 とことん土づくりにこだわった!『土男(つちおとこ)ネギ』をいただいてきました!

寒い時期、鍋料理に欠かせない長ネギ。今回はこだわりを持ってつくられた『土男ネギ』をご紹介します。

「ネギがいっぱい入っておいしそうです~」(こくさん)
「ネギさんがいっぱい入っておいしそうです~」(こくさん)

『土男ネギ』が収穫期を迎えています
『土男ネギ』が収穫期を迎えています

長ネギは古くから味噌汁や蕎麦、冷や奴などの薬味として、炒め物や鍋物などの食材として親しまれています。今回は、とことんこだわって生産され、市場でも高値で競り落とされる『土男ネギ』をご紹介します。まずは生産地の埼玉県本庄市にうかがいました。

新参者が新発想で始めたネギづくり

『土男ネギ』の生産に情熱を注ぐ木村徳成さん
『土男ネギ』の生産に情熱を注ぐ木村徳成さん

こだわりの『土男ネギ』を生産しているのは木村徳成(とくなり)さん。結婚を機に奥様のご実家の農家を継ぐことになり、年間を通して多品目の農作物をつくる昔ながらの農業を始めました。しかし、工業関連やサービス業などの経験のある木村さんにとって、こうした農業は作業ロスが多く、機械や肥料などのコストにも無駄が多いことなど、違和感をもつようになったそうです。そこで、ネギに特化して技術を追求した農業を決意。あえて作付け面積を少なくして、育成管理を徹底することで逆に生産量が増えるよう生産効率を上げながら、品質のいいものをつくろうと新たな挑戦を始めました。

左右対象に整ったうねが美しい!
左右対象に整ったうねが美しい!

もともと利根川に沿った土地は、土質がいいのが特長だそうです。
「この“地力”を最大限に活かしたうえで、さらに土づくりを徹底的に行えば、必ず質のいいネギができると信じていました」と木村さん。図書館に通って植物の生育や肥料の成分など、生物学や化学の分野までの知識を独学で得て、3年目くらいから安定的に高品質なネギの生産を行うことに成功しました。味、色味、形まで追求した『土男ネギ』は、どっしりと中身が詰まっていて、日持ちがいいそうです。
さっそく木村さんの手がける『土男ネギ』の畑を見せてもらいました。
いままで見たことのないほど、左右対称にきっちりと成形されたまっすぐな“うね(作物をつくるために何本も細長く平行に土を盛り上げたところ)”にビックリ。土の盛り揚げ方も左右対称にし、きれいに整った状態にすることで、ネギの品質も均一になるそうです。土に埋まっている白い部分より、実は緑色の葉の部分の方が栄養価は高いとのことです。

春先は、緑肥のひとつアンジェリアの花で畑一面が紫色に染まるそうです
春先は、緑肥のひとつアンジェリアの花で畑一面が紫色に染まるそうです

木村さんのこだわりは、土づくりから始まります。同じ畑で2年耕作したら翌年は土を休ませる。休ませている間は緑肥(作物の肥料となる植物)をまく、畑を耕すときに緑肥をすき込む、雑草はしっかり除草する・・・など、土についての話が止まりません。

「まっ白できれいなネギたちです~」(こくさん)
「まっ白できれいなネギさんたちです~」(こくさん)

また、苗づくりの際の予防保全も重要だということです。「いままでの農業のように病原菌や害虫にやられたら手立てをするのではなく、天候や気温、雨量、付近の畑の様子などを観察して、事前に病原菌や害虫の発生の予防対策をすることが大事。そのひとつが乳酸菌や酵母菌などの有効菌を投入することです。これにより、悪い菌が入りにくくなります」
木村さんが考え抜いたさまざまな工夫によって、結果的に減農薬につながっていくのだそうです。
「最終的に大切なのは、光合成と水と酸素です。肥料もうまく使いながら、いい環境を保ち、アスリート並みのたくましい農作物にしていきたいんですよ」と、熱く語ってくれました。

木村さんのお母様が1日中、ここに座って皮むき作業をするそうです
木村さんのお母様が1日中、ここに座って皮むき作業をするそうです

こうして収穫されたネギは、商品として出荷するまでもいろいろな作業があります。
まずは、不要部分のカット。機械で1本1本ネギの根元と葉先を同時に切り取っていきます。次は皮むき。ダクトから強力な圧縮空気が吹き出し、そのパワーで皮がきれいにむかれていきます。この作業は、木村さんのお母様の担当です。
このように、ネギは根元、葉先、皮など廃棄する部分が全体の40%にも及ぶそうで、その廃棄物の処理が課題になっているとのことです。

『土男』のこだわりを惜しみなく全国に発信

「木村さんは全国のネギ農家さんの先生です~」(こくさん)
「木村さんは全国のネギ農家さんの先生です~」(こくさん)

閉鎖的な傾向のある農家のなかで、誰にでも自分で研究したノウハウを話すオープンな木村さんのことは、「ネギづくりにこだわる熱い男がいる」と、いつしか地元農家の人たちに知れ渡ることになります。そして「ネギのことなら木村に聞け」とまで言われるほどに。いまは木村さんの存在が地元農家のカンフル剤となっているようです。
さらに、こうした技術と熱い想いを地元にとどめておくのはもったいないと、友人からフェイスブックでの情報発信を勧められた木村さん。「こんなネギの話ばかりのフェイスブック、誰が見るんだろう?」と首をかしげながら『土男ネギ』として生産の様子を綴ってみると、たちまち各方面から大きな反応がありました。たとえば、全国のネギ農家たちとの交流が始まり、お互いの生産現場の見学や技術協力などのネットワークが誕生。木村さんはネギの駆け込み寺として、さまざまな相談に乗っているそうです。また、肥料メーカーの目に止まって肥料の販売を委託され、関係する生産者たちに販売したり、後でご紹介するラーメン店の店主からの依頼で年間契約が成立したり、さまざまな広がりを見せているのです。

『土男』のロゴマーク
『土男』のロゴマーク

さらに、新しく『土男』のロゴマークも開発。「旗を立てると、そこに人が集まる」というコンセプトで、農家たちとのネットワークを広げていくことと同時に、全国のこだわりの強い料理人やこだわり食材を探しているメーカーなどとの提携をめざしているそうです。

今後は地域への貢献と技術の継承を

「元気に育ってるです~」(こくさん)
「元気に育ってるです~」(こくさん)

今後の展望として、まずは地元の仲間とともに組合をつくり、技術や雇用などを共有して後継者問題の解決など、新しい農業のスタイルを構築していきたいと考えているそうです。また、現在は障がい者を1人雇用しているそうですが、今後も積極的に地元の障がい者を雇用していくということです。「こうした農業と福祉という形での地域貢献が、全国の農家のモデルケースとなればいいと思っています」と木村さん。

『土男』ブランドを確立させて、日本の農業を盛り上げていきたいとパワフルに活動を続ける木村さん
『土男』ブランドを確立させて、日本の農業を盛り上げていきたいとパワフルに活動を続ける木村さん

もうひとつの大きなビジョンが、地域も農作物も超えた『土男』ブランドを確立すること。次世代に技術を継承するためのマニュアルをつくり、新規参入の就農者が早く一人前になれるようにサポートすること、各方面とのマッチングにより、ビジネスとしての農業を広げること。「こうして農業の底上げをしていき、食料自給率を上げていくことをめざしたい」と締めくくってくれました。

『土男ネギ』がたっぷり入った看板メニュー

『珍達そば』3代目の小崎雅也さんと木村さん
『珍達そば』3代目の小崎雅也さんと木村さん

その『土男ネギ』を実際に味わうために、県内の秩父にある『珍達(ちんたつ)そば団子坂店』を木村さんに案内していただきました。
初代創業は1953年頃。現在は3代目の店主である小崎雅也さんがお店を継いでいます。小崎さんはたまたまフェイスブックで『土男』を見つけ、「これだけこだわった長ネギを安定的に入荷できるなら、ぜひとも使いたい」とさっそく木村さん宅まで足を運んだそうです。実は、木村さんは秩父の出身で、このお店を2代目が切り盛りしていた頃によく食べに行っていたそうです。知らない者同士として話をしていくうちにそれが分かって、お互いにビックリ。不思議な縁となりました。契約してから今年で3シーズン目。小崎さんは11月〜5月の半年間で約3トンもの『土男ネギ』を仕入れているそうです。

庶民的なラーメン店の雰囲気
庶民的なラーメン店の雰囲気

さて、お店に入ってみると、テーブル席2卓、5席ほどのカウンター、お座敷の部屋が2つありますが、全体的に昔ながらのラーメン店という雰囲気。そしてメニューは、店名でもある『珍達そば』が看板メニューで、『土男ネギ』をふんだんに使用しているそうです。醤油味が基本ですが、味噌味もあります。その他、ラーメンや味噌ラーメン、チャーシューメン、そして鹿児島産黒豚使用の黒豚餃子など。

大量にネギを使用するため、カットしてストックしておきます
大量にネギを使用するため、カットしてストックしておきます

さっそく『珍達そば』をつくっていただくことに。特別につくるところを見せていただこうと厨房に入ると、ちょうど小崎さんが『土男ネギ』を5~6本まとめてザクザクと、すごいスピードで切って袋に詰めていました。
では、『珍達そば』ができあがるまでの手順をご紹介します。

ここで入れるごま油の風味が後で活きてきます
ここで入れるごま油の風味が後で活きてきます

1.鍋にごま油を入れ、『土男ネギ』と細切れの豚バラ肉を軽く炒める

ネギの食感を適度に残すよう、煮すぎないのがコツだそうです
ネギの食感を適度に残すよう、煮すぎないのがコツだそうです

2.スープとタレを加えて具材を煮る

そばをゆで始めるタイミングも肝心
そばをゆで始めるタイミングも肝心

3.その間に別の鍋で麺をゆでる

細麺なのであっという間にゆで上がります
細麺なのであっという間にゆで上がります

4.10秒ほどで麺を引き上げ湯切りする

煮込みラーメンのような感じです
煮込みラーメンのような感じです

5.麺をスープの鍋に移して軽く煮込む

スープもすべてどんぶりに入れます
スープもすべてどんぶりに入れます

6.スープごと器によそって完成

麺と具材とスープを鍋の中で合わせて一緒に煮る、煮込みラーメンのような調理法です。そして、完成品は麺が見えないくらい大量のザク切りネギ。一人前につき1本半ほどのネギを使っているそうです。
それでは、いただきます!

見た目にもとろみがわかる『土男ネギ』がふんだんにのった看板メニュー『珍達そば』
見た目にもとろみがわかる『土男ネギ』がふんだんにのった看板メニュー『珍達そば』

まずはネギをひとくち。とろ~りとしていながらシャキシャキ感も残っている絶妙なバランスの食感で、ネギの甘みが口いっぱいに広がります。さらにごま油の香ばしさが引き立ちます。次にスープを飲んでみると、煮干しのだしと醤油がやさしいおいしさで、そこにごま油の風味がアクセントになっています。そして、麺はつるっとした食感の細麺で、スープの味がしっかりからんでいます。ネギのとろみがあんかけ風になるため、スープや麺が熱々。最後まで冷めることなく、おいしくいただきました。ネギと麺とスープの組み合わせが独特のおいしさで、クセになりそうです。
「ネギが命のメニューですから、『土男ネギ』と出会って本当によかったと思っています。普通のネギより重みがあって、しっかりしているのに煮るととろみが出て、うっかりすると溶けちゃうくらいみずみずしいんです」と小崎さんは『土男ネギ』の品質のよさを実感しているようです。ここで木村さんが「品種や生産地などを検討して、いずれは夏場もつくれるようにしていきたい」と言うと、「それは助かります。ぜひぜひ、つくってください」と小崎さん。『土男ネギ』と『珍達そば』のコラボレーションは、さらに充実していきそうです。

国産食材を使って味を伝承していきたい

有名な秩父夜祭りの最大の見所近くにあります
有名な秩父夜祭りの最大の見所近くにあります

お店は11時開店ですが、閉店は品切れ次第。地元の人はもちろん観光客やラーメン通にも好評で、週末は外にずらりとお客さんが並ぶほどの人気店です。
店主となって8年目の小崎さんは国産食材にこだわり、ネギ以外も餃子には鹿児島県産黒豚を使用、だしの煮干しやチャーシューにする豚肉などもすべて国産、麺は地元の製麺所から仕入れているそうです。
今後の方針をお聞きすると、「国産の安心・安全でおいしい食材を使って、この味を守り続けていきます。たくさんの方に『珍達そば』の味を知ってもらえるよう、店舗展開していければと考えています」と語ってくれました。

生産者と料理人の想いを伝えていくために

いい農産物をつくっていきたいとたゆまぬ努力を続ける生産者の木村さん。そして、その農産物を活かしておいしさを届けたいと頑張る料理人の小崎さん。ふたりとも、地元を大切にしながら全国の農業を元気にしていきたい、安心・安全でおいしい国産の食材を多くの人に提供していきたいという熱意が感じられました。こうしたこだわりの国産食材が、生産者や料理人などを通じてもっともっと身近に広まってほしいと思います。まずは、双方の想いが詰まったこだわりの『土男ネギ』と『珍達そば』を食べてみませんか?
全国には、こうした魅力ある食材がまだたくさんあるはずです。今後もMogu・Maga編集部はさまざまなこだわりを持った各地の食を見つけてご紹介していきますので、お楽しみに。
(Mogu・Maga編集部)
取材協力:土男(つちおとこ)珍達(ちんたつ)そば団子坂店