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2014年11月19日

秋といえば新米! 新潟の棚田の稲刈りを見学しました!

新潟県十日町市の棚田で『魚沼産コシヒカリ』を生産している農家を訪問し、稲刈りの様子を見学してきました。

「実りの秋は、黄金色の稲穂がきれいです~」(こくさん)
「実りの秋は、黄金色の稲穂がきれいです~」(こくさん)

『大地を守る会』が手がける『日本の原風景・里山の棚田米』

自然環境と調和した暮らしを目指して、有機・減農薬野菜などを届ける食材宅配の『大地を守る会』は、お米についても有機農法にこだわり、その流通に力を入れてきました。こうした中で棚田米にも注目し、2013年には新潟県・島根県・高知県・岩手県で6人の生産者が栽培した棚田米を『日本の原風景・里山の棚田米』という商品名で販売。フード・アクション・ニッポン アワード2013の商品部門最優秀賞も受賞しています。

棚田米・魚沼産コシヒカリ・有機栽培という価値

棚田は、懐かしさを感じる日本の原風景
棚田は、懐かしさを感じる日本の原風景

今回は、『日本の原風景・里山の棚田米』の生産者のひとり、新潟県十日町市の佐藤克未さんの棚田におうかがいしました。このあたりは農林水産省の日本の棚田百景にも選定された棚田の里として知られる松之山地域の一角で、まさに日本の原風景が広がっています。佐藤さんが手がけるお米は最高級ブランドの『魚沼産コシヒカリ』。しかも、有機農法で手間暇かけて作られています。

棚田でお米を有機栽培している佐藤克未さん
棚田でお米を有機栽培している佐藤克未さん

佐藤さんに名刺をいただくと、農林水産省有機JAS認定、新潟県特別栽培農産物認証、新潟県エコファーマー認定、グットファーマー認定といくつもの認定が記されていて、佐藤さんの生産者としての姿勢とお米の品質のよさを証明してくれます。
棚田米のおいしさの秘密はどこにあるのでしょうか?佐藤さんにお聞きすると「標高310m~458mの山あいにある水田だから、昼夜の寒暖差が激しい。1日のうち20℃くらい差が出ることもある。それがおいしいお米になる条件の1つだね。

それから、棚田の上には民家がないから家庭排水が混入しないことと、山からの湧き水が豊富にあること。おかげで甘みと香りの良いお米が作れるんだ」と教えてくれました。水のきれいさは、水田にホタルが飛び交い、自宅前の川では天然のイワナが釣れるほどだそうです。

コンバインで次々と稲を刈り取り、脱穀していく
コンバインで次々と稲を刈り取り、脱穀していく

いよいよ稲刈りのスタート。おうかがいしたのは10月中旬ですが、もうすでに8割ほどの水田は稲刈りが終わっていました。平場の四角い水田とは違って急な斜面に階段状に続く曲線の水田のため、機械作業も手間がかかるそう。稲刈りの時に使われる機械は、コンバインと呼ばれる稲刈りと脱穀を1台でこなす優れもの。刈り取られた稲は次々に脱穀されて“もみ”がタンクに貯められ、不要な稲ワラはその場で排出されます。

山ぎわの稲は鎌で手刈りする
山ぎわの稲は鎌で手刈りする

水田の中心あたりはコンバインで小回りしながら何度も往復して刈り取っていき、山ぎわは雨水が溜まりやすく稲が倒れてしまうため、鎌で手刈りするしかないのだそうです。
ただ、こうして雨水の一部を溜める棚田の保水力のおかげで、水はゆっくりと大地に浸水していき、常に豊かな水資源を保てるとのことです。

また、稲刈り中にたくさんのアカガエルが飛び回っていましたが、さまざまな小動物や昆虫、植物等が生息しているのも自然の水路がある棚田の特徴だそうです。加えて佐藤さんの棚田は有機農法のため、さらに環境保全に役立っています。
こうして1段ずつ刈り取り、1ヵ所の棚田が終わるとまた別の棚田へ。佐藤さんが持っている棚田はあちこちに点在していて、あわせると60枚分、面積にして4ヘクタールあり、これらすべての稲刈りが終わると、ホッとひと息です。

自家精米するため作業場はハイテク!

コンバインのアームが伸びてトラックの荷台に“もみ”が移される
コンバインのアームが伸びてトラックの荷台に“もみ”が移される

稲刈りでコンバインのタンクに貯まった“もみ”はアームのような装置でトラックの荷台に移し替えられて、自宅横の作業場に運ばれます。作業場にうかがってみると、なにやら大小さまざまな機械がズラリ。佐藤さんはすべて自家精米しているため、乾燥・もみすり・選別・袋詰めまでの作業をここで行います。「機械マニアなもので」と笑いながら工程を説明してくれました。

不良米や異物を取り除く高精度な色彩選別機
不良米や異物を取り除く高精度な色彩選別機

まずは乾燥。佐藤さんが所有している乾燥機は遠赤外線で乾燥させるため、熱風で乾燥させるものに比べて低温での乾燥が可能で、糖分を破壊しにくいそうです。ここにもお米の甘みを保つ秘密がありました。次はもみすりから選別までのライン。“もみ”から“もみがら”を取り除き、それを色彩選別機にかけて不良米や異物を取り除き、最後にサイズの選別をします(新潟では通常1.9mmのところ佐藤さんは1.95mmの大粒のものを出荷)。とくに色彩選別機は高精度で、有機栽培のために多く発生するカメムシによる被害米や青い未熟米、石やガラスなどの異物を確実に除去するため、良質米だけが選別されて安全・安心につながります。

米袋にしっかりと有機JASマークが貼られている
米袋にしっかりと有機JASマークが貼られている

選別されたお米は最後に袋詰め。『魚沼産コシヒカリ』と表記された米袋には、有機JASマークもしっかり貼られています。これを等級検査に通して初めて販売先に卸すことができます。佐藤さんのお米は毎年すべて最高ランクの1等級を確保しています。

「佐藤さんのお米は最高ランクです~」(こくさん)
「佐藤さんのお米は最高ランクです~」(こくさん)
棚田米は収量より品質にこだわる

このあたりは12月ともなると雪が積もり始め、真冬は4mを超える積雪となる豪雪地域。5月に入る頃にやっと雪が溶け、佐藤さんが棚田で田植えをするのは5月下旬から6月中旬になるそうです。

ビニールハウスではなく外の水田で苗を育てている
ビニールハウスではなく外の水田で苗を育てている

それまでの間、種子の選別に徹底的にこだわり、育苗も苗を過保護にしないよう設備の整ったビニールハウスではなく外の水田で栽培し、さらに苗を踏みつぶしてストレスを与えるという独特の方法で育てていきます。厳しく育てた方が、それに打ち勝とうとして元気ないい苗ができるのだそうです。

すべての棚田での田植えを終えると、その後3回にわたって歩行式の草刈り機を使って除草作業を行います。「すべての棚田を歩きながら除草するから、これが棚田という地形で最も苦労するところだね」と佐藤さんは語ります。

稲穂が出てきたら、またまたハイテク機械の登場です。それが食味分析計。本来はすでに収穫したお米で計測するものでしたが、水田に持ち出して栽培中の稲でもおいしさを数値で測れる最新型を導入したのです。そのため栽培中にさらにおいしいお米を作るための対策を行うことができ、品質向上につながります。
このように、コシヒカリという品種のよさや、生産地の気候や水、土などの環境はもちろんのこと、種選びから栽培法、精米まで佐藤さんのこだわりと情熱があるからこそ、さらにおいしいお米ができるのです。
「棚田ではなかなか収量は上がりません。でも、量より質にこだわっていきたい。自分が納得いくものを作って、販売店にもお客さんにも喜んでもらうのがいちばん」というのが佐藤さんの信念です。とくにおいしく食べる方法をお聞きしてみると、「特別なことは何もないよ。うちの米は普通に炊いて、このへんで採れた山菜の煮物と一緒に食べるのがいちばんだね」と佐藤さん。まさに地産地消です。

もっとお米を食べよう!
ずっしりたわわに実った稲穂を見たら、ご飯が食べたくなってきませんか?
ずっしりたわわに実った稲穂を見たら、ご飯が食べたくなってきませんか?

もっとご飯を食べる食生活をしていきましょう
もっとご飯を食べる食生活をしていきましょう

棚田は、お米自体のおいしさに加え、美しい日本の景観であること、生物多様性の維持や保水機能などの環境保全、先人たちが残した文化的価値などの魅力があり、『大地を守る会』では、棚田米の生産者をサポートしながら棚田の保存と活用に積極的に取り組んでいます。しかし、私たち消費者が買って食べなければ、そうした取り組みも維持できません。大切な棚田を次の世代に残していくためにも、まずは私たち一人ひとりが食生活を見直して、もっともっとお米を食べる暮らしを心がけてみませんか?
(Mogu・Maga編集部)
取材協力:大地を守る会