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2016年3月18日

発掘!地域のブランド食材 淡い黄色のオレンジ?
『湘南ゴールド』をいただいてきました!

かんきつ類は種類が豊富ですが、その中でも今回は神奈川県が12年の歳月をかけて開発した新品種のかんきつ『湘南ゴールド』を取材してきました。

「『湘南ゴールド』を使った食べ物がいっぱいで、どれもおいしそうです~」(こくさん)
「『湘南ゴールド』を使った食べ物がいっぱいで、どれもおいしそうです~」(こくさん)

12年の歳月をかけて誕生した『湘南ゴールド』
12年の歳月をかけて誕生した『湘南ゴールド』

かんきつ類は、日本生まれとして昔から親しまれているみかん、海外から伝わったオレンジ、それらを掛け合わせたものなど、日本ではその種類が豊富で、ほぼ1年中全国各地で生産されています。
今回は、神奈川県が生んだ『湘南ゴールド』にスポットをあてます。まずはJAかながわ西湘の生産指導担当者に話をうかがいました。

『湘南ゴールド』誕生への道のり

神奈川県西部の相模湾を望む高台には、かんきつ類の畑が広がります
神奈川県西部の相模湾を望む高台には、かんきつ類の畑が広がります

神奈川県西部の海沿いから山にかけてはその昔、有数のみかん産地でした。ところが、他県産にシェアを奪われたり、消費者の志向が変わっていく中、生産量は急激に少なくなりました。
一方、同様にこの地域の特産である「黄金柑(ゴールデンオレンジ)」は、味や香りが優れていながら、あまりに小さくて食べにくく、生産性も低いため、市場に出回っていませんでした。こうしたことを背景に、神奈川県がみかんの食べやすさと「ゴールデンオレンジ」の香りと味をもったかんきつ類をつくろう!と立ち上がりました。そして県農業技術センターが12年の歳月をかけて開発したのが、みかんの一種「今村温州(いまむらうんしゅう)と「ゴールデンオレンジ」を掛け合わせた『湘南ゴールド』です。

手のひらに収まる小ぶりな『湘南ゴールド』
手のひらに収まる小ぶりな『湘南ゴールド』

こうして、みかんより小ぶりのサイズと、美しい淡い黄色の皮と実が特長の『湘南ゴールド』の生産が、神奈川県小田原市を中心にスタートしました。

生産の安定化とブランド化を実現

JAかながわ西湘で生産指導を行う保田喜保さん
JAかながわ西湘で生産指導を行う保田喜保さん

最初に市場出荷したのは2006年。少しずつ生産農家が増えてきたものの、生産拡大にはさまざまな課題があったそうです。ひとつは、実ができるまで数年かかること。かんきつ類が通常3~5年で実がなるところ、7年経っても実ができない畑もあったようです。ふたつめは、1年ごとに豊作・不作を繰り返す性質があって、収穫量が一定ではないこと。
当時から『湘南ゴールド』に携わってきたJAかながわ西湘の保田喜保(やすだよしやす)さんは、生産農家の苦悩を見てきました。
「『湘南ゴールド』の木は生育が強いんです。どんどん枝葉が伸び、根も広がっていくので、剪定などに手間がかかります。また、その年の初めにできた実は小さいうちに獲っておかないと、木に負担がかかって次に実がなりにくくなります」
そこで、安定的な生産技術の確立とブランド化をめざして、2011年2月、JAかながわ西湘が生産農家に呼びかけて「JAかながわ西湘・湘南ゴールド技術研究会」を設立。苗木の定植、剪定、収穫のタイミング、果実の貯蔵など、さまざまな技術を共有し、生産の安定化、生産量の拡大にむけて取り組んだそうです。

手でさわって収穫のタイミングを判断するそうです
手でさわって収穫のタイミングを判断するそうです

こうして、いまでは神奈川県西部のJAかながわ西湘エリア2市8町(小田原市、南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町、湯河原町)で、少しずつ時期をずらしながら3月上旬から4月下旬にかけての約2ヵ月、『湘南ゴールド』が安定的に出回るようになりました。
さらに、「かながわブランド」としての認定も受け、『湘南ゴールド』はJAかながわ西湘のエリア内だけでなく、神奈川県をあげての特産品として、全国展開へ向けて期待が高まっています。

『湘南ゴールド』は香りと味のバランスが魅力!

太陽の光をさんさんと浴びておいしくなります
太陽の光をさんさんと浴びておいしくなります

今回おじゃました農園は、小田原市早川の相模湾を望む高台。たっぷり太陽の光が注ぐ地に、みかんやレモンなどとともに、『湘南ゴールド』がいっぱい実をつけています。

「皮をむいたとたんに、さわやかな香りがいっぱいです~」(こくさん)
「皮をむいたとたんに、さわやかな香りがいっぱいです~」(こくさん)

『湘南ゴールド』の魅力のひとつが香りだということで、ひとつ獲って皮をむいてもらいました。その瞬間、まるでスプレーでまいたのではないかと思うほど、フレッシュな香りが周辺に広がりました。
「皮と実の間に香り成分があるから、こうして指で皮をむくのがいちばん」と保田さん。包丁でカットするより、この方が香りが楽しめるのだそうです。
実を食べてみると、さわやかな酸味のあとにしっかりと甘みを感じる絶妙な味のバランス!清涼感いっぱいの味わいで、何個でも食べられそうなおいしさでした。

『湘南ゴールド』をもっと広めていくために

「出荷の検査に合格してから、お店に出荷されるです~」(こくさん)
「出荷の検査に合格してから、お店に出荷されるです~」(こくさん)

今年は約200名の農家が『湘南ゴールド』を生産し、140名ほどの農家から出荷され、目標としていた年100トンの出荷量に届く勢いだそうです。露地物のほか、一部ハウス栽培もはじめたとのことです。
こうしてある程度、生産技術が確立され、生産量も順調に増加してきたため、技術研究会は解散しました。その代わりに2015年7月、今後はもっと販売に力を入れていこうと、「SG21(湘南ゴールド生産販売組織)」を結成。ブランド力を維持するために、生産農家たちが同じビジョンをもって品質を高めていくことをめざしているそうです。出荷規格を設けてチェックしたり、消費者目線での販売方法を考える講習会を開催したり、具体的な取り組みもスタートしました。

作業服姿の保田さんは、これからスーツに着替えて商談に出かけるそうです
作業服姿の保田さんは、これからスーツに着替えて商談に出かけるそうです

「“希少性”のアピールは一時期はいいのですが、飽きられたらおしまいです。これからは珍しさではなくおいしさをしっかりアピールしながら、まず『湘南ゴールド』を知ってもらい、さらにリピーターになってもらえるような販売体制を整えていきたいと考えています。これからが本当の勝負です」と保田さん。
3月中旬からは県内の大型JA直売所8ヵ所やAコープ、JAグループのインターネットショッピングサイト“JAタウン”などで、本格的に『湘南ゴールド』が販売されます。箱根湯本駅では無料配布も。また、首都圏の大手百貨店などでも扱うなど、販路も少しずつ広がりを見せています。

穫れたての『湘南ゴールド』を売る『朝ドレファ~ミ♪ハルネ店』

店内は、おしゃれなスーパーマーケットのイメージ
店内は、おしゃれなスーパーマーケットのイメージ

次に、『湘南ゴールド』の果実と加工食品を販売しているJAかながわ西湘直営の農産物直売所『朝ドレファ~ミ♪ハルネ店』を訪ねました。
新たな小田原地下街として2014年11月にオープンした『ハルネ小田原』の中にあり、周囲には飲食店や生活雑貨店も並ぶため、地元住民から観光客までさまざまな人が行き交う場所です。
店内には新鮮な農作物が数多く陳列され、その他に農家の方々の手作り加工食品などもあり、直売所というよりスーパーマーケットのような広さと品揃え。基本的に農産物は地元産、それでまかなえないものは神奈川県産、県外産というように、取り扱う農作物はすべて国産です。

「淡い黄色がいっぱいで、きれいです~」(こくさん)
「淡い黄色がいっぱいで、きれいです~」(こくさん)

ここでは、積極的に『湘南ゴールド』を販売。3~4月の旬の時期には、10軒ほどの農家から持ち込まれた『湘南ゴールド』がずらりと並び、陳列台が一列、淡い黄色一色になるそうです。

穫れたての『湘南ゴールド』を売る『朝ドレファ~ミ♪ハルネ店』

『朝ドレファ~ミ♪ハルネ店』店長の鈴木健一さん
『朝ドレファ~ミ♪ハルネ店』店長の鈴木健一さん

店長の鈴木健一さんにお話をうかがいました。
「店頭で『湘南ゴールド』を見たお客様は、まずレモンのような色だから酸っぱそう・・・と思われる。値段も高め。マイナスイメージからのスタートなんです。だから、試食用にカットしたものを用意して、まずは食べてもらうことが必須ですね。そうすると、レモンと違ってやさしい
酸味で甘さもしっかりあることを分かってもらえます」
実際に売り場で、恐る恐る試食用を手にとって食べたお客様が「あら、甘いのね」と話している姿を見かけました。

試食してもらうことが大切
試食してもらうことが大切

お客様に食べて納得してもらうためには、店側の努力も必要です。
生産農家が『湘南ゴールド』を持ち込んだ際、鈴木さんやスタッフによる食味検査を行うのだそうです。食べて甘みと酸味のバランスなどを確かめ、合格したものだけを引き取り、店頭に並べます。
「まだ酸味の強いものは、持ち帰ってもらいます」
鈴木さんもここは心を鬼にしてきっぱり断るそうです。冷暗所で10日ほど置くと、酸味が落ち着いて甘みが増し、おいしくなるそうなので、その頃に再度持ち込んでもらいます。農家に厳しいようでも、お客様にきちんと『湘南ゴールド』のおいしさを知ってもらうためには、大切なことなのでしょう。

『湘南ゴールド』の加工食品も多種多彩

『湘南ゴールド』の加工食品も数量限定です
『湘南ゴールド』の加工食品も数量限定です

果実そのものは旬の2ヵ月ほどしか出回りませんが、加工食品であればもう少し長く販売できて、『湘南ゴールド』の知名度アップにもなります。『朝ドレファ~ミ♪ハルネ店』でも、さまざまな加工食品を販売中。その中からいくつかご紹介します。

「たくさんかけたくなるです~」(こくさん)
「たくさんかけたくなるです~」(こくさん)

◎湘南ゴールド 朝ドレッシング
JAかながわ西湘のオリジナル商品。『湘南ゴールド』をふんだんに使用したフルーティなドレッシングで、サラダにかけるのはもちろん、カルパッチョなど料理のソースとしても活躍。ステーキやチキンソテーなど肉料理とも相性がよく、さわやかな風味が引き立ちます。

食材は国産にこだわっています
食材は国産にこだわっています

◎湘南ゴールド あまから味噌だれ
味噌だれに『湘南ゴールド』のさわやかな味が加わります。タマネギと唐辛子も神奈川県産。ショウガやにんにくなど香味野菜もすべて国産を使用しています。炒め物に入れたり、マヨネーズと合わせてディップにしたり、さまざまな料理に使えます。

フレッシュジュースのようなさわやかさ
フレッシュジュースのようなさわやかさ

◎湘南ゴールドのお酒
地酒の『箱根山』をベースに『湘南ゴールド』を50%以上も使用した
リキュール。アルコール度は低めでフルーティな飲みやすさ。まろやかな口当たりと、すっきりさわやかな後味です。『湘南ゴールド』の香りが存分に楽しめます。

調味料からお菓子、お酒まで、どれも『湘南ゴールド』の香りと 味を活かしています
調味料からお菓子、お酒まで、どれも『湘南ゴールド』の香りと
味を活かしています

収穫が終わる頃になると、生産農家が手作りした『湘南ゴールド』入りのあんこや寒天、ママレードなども持ち込まれるそうです。
また、6月にはJAかながわ西湘オリジナルの『湘南ゴールド』ジュースが新発売の予定。夏にすっきり飲める清涼感ある飲料に仕上がっているそうです。

さまざまなコラボで『湘南ゴールド』のアピールを

いろいろなポップで『湘南ゴールド』のPRを工夫しています
いろいろなポップで『湘南ゴールド』のPRを工夫しています

オリジナル商品の開発や食品メーカーとのタイアップのほか、今後はもっと地元の料理人とも連携していきたいという鈴木さん。
「たとえば、小田原市内のレストランに『湘南ゴールド』を納入して料理やデザートを提供してもらい、そこで“生の『湘南ゴールド』は『朝ドレファ~ミ♪ハルネ店』で買えます”と宣伝してもらう。うちの店頭では“『湘南ゴールド』の料理やデザートが○○レストランで食べられます”と宣伝する。こんなふうに相乗効果を高めていきたいですね」
こうして、『湘南ゴールド』のおいしさをいろいろな形で広めていきたいと意気込みを語ってくれました。さらに、さまざまなアイディアで『湘南ゴールド』の知名度アップを図りながら、地域活性化にもつなげていきたいと話します。

『湘南ゴールド』普及への意気込みを語る鈴木さん
『湘南ゴールド』普及への意気込みを語る鈴木さん

一方で、消費者の反応を目の当たりにしている立場から、消費者と農家との橋渡し役であると考えているそうです。
「お客様のさまざまな声を農家の方々にも伝えています。『湘南ゴールド』をアピールし、販売量を増やしていくことが、農家の方々を支援することになるのですから」
鈴木さんの『湘南ゴールド』への愛情と使命感が伝わってきました。

季節ごとの国産かんきつ類をもっと食べよう!

生産農家とともに歩む保田さん、消費者へのPRを考え続ける鈴木さんから、『湘南ゴールド』を一時のブームではなく、長く親しまれるフルーツとして普及させていきたいという熱い想いを感じました。
ここでご紹介したもの以外にも、『湘南ゴールド』は近年、さまざまな加工食品が登場。「フード・アクション・ニッポン アワード2014」商品部門で優秀賞を受賞したサークルKサンクスのシュークリームやレアチーズ、横浜や箱根の一流ホテルで販売されるオリジナルスイーツ、特急ロマンスカー車内販売のゼリー、神奈川県内の地ビールメーカーによるフルーツビール、その他ロールケーキやパン、のどあめなど、各種メーカーとの連携による加工食品が販売されています。
まずは、旬の『湘南ゴールド』を果実そのもので味わい、次に加工食品でも『湘南ゴールド』のおいしさを楽しんでみませんか。
そして、これからの季節も「デコポン」「はっさく」「清見」「夏みかん」など国内各地のおいしいかんきつ類がたくさん出回りますので、いろいろな種類の国産かんきつ類を見つけて、『湘南ゴールド』と食べ比べをしながら味わうのが楽しみです。
まだまだ日本全国には、こうした地元産の魅力ある食材があるはずです。今後もMogu・Maga編集部は、国産の食材の魅力を探す旅を続けますので、お楽しみに。

(Mogu・Maga編集部)
取材協力:JA全農かながわJAかながわ西湘朝ドレファ~ミ♪ハルネ店