日本の「おいしい!」をさまざまな切り口でお届けしていきます。

2015年11月30日

発掘!地域のブランド食材 常識を越えた大きさ!『ジャンボなめこ』をいただいてきました!

秋から冬にかけては、きのこ類がおいしくなる時期ですが、今回はなめこの中でもとくにビッグサイズの『ジャンボなめこ』をご紹介します。

「『ジャンボなめこ』を使ったメニューがずらり!早く食べたいです~」(こくさん)
「『ジャンボなめこ』を使ったメニューがずらり!早く食べたいです~」(こくさん)

なめこは、学名にも和名がそのまま使われている日本特産のきのこです。今回ご紹介する『ジャンボなめこ』は、なめこの常識を越えた大きさが特徴で、おいしさや食感も格別。まずは生産地である福島県郡山の『鈴木農園』を訪ねました。

複合的な技術の結集で『ジャンボなめこ』が誕生

培地のベースとなるおがくず
培地のベースとなるおがくず

なめこをはじめとするきのこ類は、現在そのほとんどが菌床(きんしょう)栽培という方法でつくられています。おがくずにさまざまな栄養素と水を混ぜて形成したものを培地(ばいち)といい、ここに種菌(たねきん)を植えつけて空調管理された施設内で育てるのが菌床栽培です。
『鈴木農園』もなめこの培地をビンに詰めて菌床栽培していますが、そのなかで『ジャンボなめこ』は独自に開発したオリジナルなめこ。開発のきっかけについて、『ジャンボなめこ』生産者2代目の鈴木清美(きよみ)さんにうかがいました。

『ジャンボなめこ』生産の後継者・鈴木清美さん
『ジャンボなめこ』生産の後継者・鈴木清美さん

「元々、ひらたけ栽培をしていたのですが、需要が減ってしまったため、20年ほど前になめこ生産を開始しました。当時、すでにこの地域ではなめこ生産がさかんで、後から参入したウチは何か差別化を図らなければ、という想いで父が『ジャンボなめこ』の開発をはじめたのです。どうしたら大きくておいしいなめこを安定的に生産できるか、父は独学で栽培方法を研究し、試行錯誤を繰り返してやっと商品化することができました」約10年かけて開発した『ジャンボなめこ』の栽培の要は、培地に混ぜる肥料だそうです。おがくずに米ぬかをはじめ10種類以上の栄養素を加えるそうですが、その内訳は「企業秘密です」と鈴木さん。

右が通常サイズのなめこ、左が『ジャンボなめこ』。その大きさは一目瞭然です
右が通常サイズのなめこ、左が『ジャンボなめこ』。その大きさは一目瞭然です

この培地によって、通常は1回しか収穫できないなめこをさらに大きく育て、2回目の収穫で『ジャンボなめこ』を収穫することができるのだそうです。
さらに、種菌は種苗メーカーから購入するのが一般的ですが、『鈴木農園』は種菌までも開発。
「培地、種菌、管理法。これらの複合的な技術があってこそ、『ジャンボなめこ』をつくることができるのです」と話す鈴木さんご自身は、3年ほど前に跡継ぎを決意して郡山に戻ってきたそうです。

120日かけて低温でじっくりと栽培

「収穫直前の『ジャンボなめこ』がいっぱいです~」(こくさん)
「収穫直前の『ジャンボなめこ』がいっぱいです~」(こくさん)

施設での管理法も独自の工夫があるようです。実際に見せてもらいながら、栽培から出荷までの工程を説明してもらいました。

仕込んだばかりの培地は黒っぽい色をしています
仕込んだばかりの培地は黒っぽい色をしています

1.ビンに培地を仕込む
  (この培地に企業秘密の栄養素がたくさん含まれています)

2.ビンごと加熱殺菌する
  (殺菌後にゆっくりと冷却します)

温度管理された培養室にビンが並びます
温度管理された培養室にビンが並びます

3.ビンの中の培地に種菌を植えつける
  (この種菌も独自開発しています)

4.培養室で約80日間、培養する
  (初期培養室で約30日、温度・湿度の異なる後期培養室で約50日、培養します)

培養が終わると培地は白くなり、表面に菌糸が出てきます
培養が終わると培地は白くなり、表面に菌糸が出てきます

5.培養室から出して育成する
  (収穫用の部屋に移動し、ビンのふたを外して散水しながら約1週間育成します)

なめこを手作業でスピーディにカットしていきます
なめこを手作業でスピーディにカットしていきます

6.1回目の収穫
  (S~Mサイズのなめこを収穫します)

7.約30日後に2回目の収穫
  (Lサイズ~ジャンボサイズのなめこを収穫します)

見事に4種のサイズに分かれていきます
見事に4種のサイズに分かれていきます

8.なめこのサイズを選別する
 (大きさの異なる網の目になめこを通して選別します)

重量を測って袋詰めします
重量を測って袋詰めします

9.サイズごとにパッケージする
 (出荷先によって手作業・機械作業とパッケージ法が異なります)

「いよいよ全国に出荷されていくです~」(こくさん) 
「いよいよ全国に出荷されていくです~」(こくさん) 

10.箱詰めして出荷する
 (常温ではなめこが成長を続けるため、出荷する直前まで箱ごと冷却します)

「120日もかけて、こんなに大きく育ったです~」(こくさん)
「120日もかけて、こんなに大きく育ったです~」(こくさん)

『鈴木農園』では、通常50~60日間培養するところを80日間、培養後から最後の収穫まで通常20~30日間のところを40日間、栄養たっぷりの培地でじっくり育てます。これにより、大きくておいしい『ジャンボなめこ』を生産しているようです。

なめこの菌床は野菜づくりの有機堆肥に再利用

収穫を終えたビンには菌床が残っています
収穫を終えたビンには菌床が残っています

こうしてなめこの収穫を終えると、大量の菌床が産業廃棄物として処分されます。これらの菌床をただ廃棄するだけでなく、何かに使えないかと鈴木さんが考えついたのが、近隣の遊休農地を借りての野菜づくりです。畑の有機堆肥として、菌床を再利用しています。現在、野菜づくりの主力商品は、夏場の枝豆。その他に、にんじん、カラーピーマン、かぶ、さつまいもなど、1年を通して野菜づくりを行っています。
収穫後のなめこの菌床は野菜畑の堆肥に再利用し、今度は収穫後の野菜くずなどをなめこの培地に混ぜて再利用・・・と、まさに循環型農業を実現しているのです。

『鈴木農園』では、菌床を再利用するため畑に運びます
『鈴木農園』では、菌床を再利用するため畑に運びます

さらに、この野菜づくりには、もうひとつ利点がありました。それはスタッフの安定雇用です。夏場などなめこの需要が落ち込む時期にも、仕事があり安定収入につながると考えたのです。収穫したにんじんをジュースやジャムなどに加工する取り組みもはじめ、現在、『鈴木農園』では65名のスタッフの方々が1年を通して働いています。

『ジャンボなめこ』を地元に根づいた食材にしたい

『ジャンボなめこ』の主な出荷先は首都圏が中心で、なかには遠く鹿児島県のスーパーマーケットにも出荷しているそうです。逆に、地元ではあまり知られていなかったようで、鈴木さんは全国を飛び回りながら地元に根づいた商品にしていくための取り組みもはじめました。まずは、県内の直売所や展示会、商談会などで積極的に売り込み、一般の消費者へのアピールと、地元企業とのマッチングを試みているそうです。また、鈴木さんご自身が開催しているのが幼稚園でのワークショップ。「子どもたちに食べてもらうためにまず、保護者の方々に親しんでもらうことが大事だと考えました」と、かつて鈴木さんも通っていた幼稚園で、『ジャンボなめこ』についてのトーク&出張収穫体験&試食会を続けています。

『鈴木農園』が手がける畑で農業体験のプロジェクトを開催しています
『鈴木農園』が手がける畑で農業体験のプロジェクトを開催しています

さらに、ユニークな取り組みが今夏からはじめたプロジェクト『大人の農業体験Kitchen まどか食堂』。参加者を募り、『鈴木農園』で扱う『ジャンボなめこ』やその他の野菜の手入れや収穫、パッケージ、マルシェでの販売などを体験してもらったり、とれたて野菜を使った料理を畑で食べたり、さまざまな体験を通して生産者と消費者との接点をつくっていきたいと考えているそうです。
父親の後を継ぎながら、次々と新しいアイディアを生み出し、積極的に活動していく鈴木さんの食と農業への熱い想いが伝わってきました。

直売所で『ジャンボなめこ』と衝撃的な出会い

食材の仕入れを担う店舗責任者の泉田将徳さん
食材の仕入れを担う店舗責任者の泉田将徳さん

次に、「鈴木農園』の『ジャンボなめこ』を使ったメニューを提供している『居酒屋しのや』におうかがいしました。
店舗責任者兼商品管理マネージャーの泉田将徳(いずみたまさのり)さんは、あるとき直売所で偶然『ジャンボなめこ』を見つけて衝撃を受けたそうです。

和の雰囲気が漂うモダンな店内。テーブル席、お座敷、カウンターがあります
和の雰囲気が漂うモダンな店内。テーブル席、お座敷、カウンターがあります

「なんて大きななめこだ!とびっくりしたのと同時に、どう使ったらおいしくなるのか?という料理人としての好奇心がわいてきて、すぐに買って帰りました」
その後、泉田さんの父親と鈴木さんの祖父が昔からの知り合いだとわかり、またお互いが同年代ということもあって親しくなり、いまでは毎回、泉田さん自ら『鈴木農園』に足を運んで『ジャンボなめこ』や枝豆などを仕入れているのだそうです。

焼く、揚げる、煮るのどれもがおいしい!

『ジャンボなめこ』は、“ぬめり”と“えぐみ”が少なく、軸の部分の食感がしっかりしているのが特長で、とくに加熱すると風味が出てジューシーなおいしさだそうです。調理する際は素材そのものの味を活かすため、味つけは控えめにするとのことです。『ジャンボなめこ』の天ぷらは通年メニューで、その他にも常に『ジャンボなめこ』を使ったメニューを3種類以上、季節によっていろいろ変えて提供しているそうです。
本日は、焼く・揚げる・煮るの調理法で『ジャンボなめこ』メニュー3品を用意していただきました。それでは、さっそくいただきます!

炭火でゆっくり焼くことで、ジューシーな仕上がりになるそうです
炭火でゆっくり焼くことで、ジューシーな仕上がりになるそうです

■ジャンボなめこの豚バラ肉巻き
豚バラ肉は、県産の麓山高原豚(はやまこうげんとん)を使用。なめこ数本に巻きつけて串に刺し、備長炭で焼いていきます。強火で一気に焼くと、表面だけが焦げてしまうため、じっくり時間をかけて焼き、豚バラ肉の脂がなめこにしみ込んでいくのを待つそうです。

なめこと豚肉の相性は抜群です
なめこと豚肉の相性は抜群です

味つけは一切しないで、食べるときにお好みでレモンをしぼったり、岩塩をつけるだけ。まずは、なにもつけずにひと口。なめこと豚肉のジューシーさが口の中に広がります。そして、なめこの軸のシャキシャキした食感が楽しめます。次にレモン汁をかけて、岩塩をつけて、再度ひと口。酸味のすっきり感とやさしい塩気で、何本でも食べられそうなおいしさでした。

「ふわっと揚がっていておいしそうです~」(こくさん)
「ふわっと揚がっていておいしそうです~」(こくさん)

■ジャンボなめこの天ぷら
170℃の油でサクッと揚げたなめこも、岩塩でいただきます。お好みで天つゆも用意しますが、素材の味を消さないよう薄味にしてあるそうです。
かじってみると、サクサク!そして、かんでいるうちになめこのジューシーなおいしさが広がります。

「なめこがたっぷり!お肉も霜降り牛肉で豪華です~」(こくさん)
「なめこがたっぷり!お肉も霜降り牛肉で豪華です~」(こくさん)

■福島牛とジャンボなめこのすき焼き
福島牛のA4ランク霜降りを使用した、ぜいたくなすき焼きです。なめこ以外に郡山産を中心とした白菜、長ネギ、春菊、しいたけ、えのきだけなどの野菜、焼き豆腐も入って具だくさん。具材の味を活かすために、たれは少し甘めの味つけにしているそうです。
なめこは、煮ると傘の部分のやさしいぬめりと、軸の部分のシャキシャキ感という異なる食感が楽しめます。牛肉と一緒に食べると、双方の旨みが溶け合って、濃厚な味がたまらないおいしさです。
また、卵は郡山市内の養鶏場で生産された、黄身のしっかりした新鮮な卵を使用しています。

地元食材を使って生産者の想いを届けたい

お店の入り口もシックな雰囲気。福島の地酒のラベルが並んでいます
お店の入り口もシックな雰囲気。福島の地酒のラベルが並んでいます

『居酒屋しのや』は、地元食材を活かした料理を提供することで、地元の生産者と消費者をつなぎたい、というコンセプトのもと、昨年11月にオープンしました。『ジャンボなめこ』をはじめ、郡山ブランドの野菜、旬の魚介類、福島牛・麓山高原豚・エゴマ豚・会津の馬刺しなどの県産の食肉など、できる限り地元で生産したものを使っています。
さらに、食材だけでなくアルコール類も福島県産にこだわり、ビールは『ふくしま路ビール』、日本酒も県内で醸造された銘柄を数多く揃えています。

『鈴木農園』から仕入れたばかりの『ジャンボなめこ』、ひらたけ、さつまいも
『鈴木農園』から仕入れたばかりの『ジャンボなめこ』、ひらたけ、さつまいも

「直接、農家さんを訪ねたり、魚市場に出かけたり、食材を自分の目で確かめるのはもちろんのこと、生産者の方々からこだわりや苦労した点など、いろいろ話を聞かせてもらいます。生産者の皆さんの想いを来店するお客様に伝えるのが、自分たちの役目だと考えているからです」と泉田さん。10月には2号店もオープンし、商品管理マネージャーとして2店舗分の食材の仕入れに走り回る日々です。
さらに、ご自分の店舗の仕事だけでなく、地域イベントなどで、調理担当として鈴木さんたち生産者と一緒に地元の農林水産物を広めていく活動もはじめているそうです。

努力とアイディアで地元食材のブランドづくりを

今回、取材した鈴木さんも泉田さんも、生産者・飲食店というそれぞれの立場でつねに地元のことを想い、農業を次世代につなげていくために、地道な努力と斬新なアイディアで地元食材に光をあててブランドにしていく取り組みを続けています。その姿勢と熱意にとても感動しました。
全国各地には、まだまだたくさんの隠れた魅力溢れる食材があるはずです。これからもMogu・Maga編集部は国産の食の魅力を見つける旅を続け、ご報告しますので、ご期待ください。

(Mogu・Maga編集部)
取材協力:鈴木農園居酒屋しのや