日本の「おいしい!」をさまざまな切り口でお届けしていきます。

2016年2月4日

紅白の卵?黄身の色が2色ある『情熱卵(じょうねつたまご)』を取材しました!

群馬県の養鶏場では、エサにこだわった黄身が2色ある卵がつくられています。その名も『情熱卵』。さっそく取材に行ってきました。

「紅白の黄身がとっても鮮やかです~」(こくさん)
「紅白の黄身がとっても鮮やかです~」(こくさん)

こだわりを持ってつくられた卵は全国各地にありますが、『情熱卵白(じょうねつたまごしろ)』と『情熱卵朱(じょうねつたまごあか)』は、とくにエサや飼育環境にこだわった黄身の色が異なる2種類の卵。生産者である群馬県太田市の『ぼくらの希望ファーム』を訪ねました。

自分たちが満足できる卵づくりを!

『ぼくらの希望ファーム』の鶏舎
『ぼくらの希望ファーム』の鶏舎

遠くに山々を見ながら野菜や小麦の畑が広がる中に、『ぼくらの希望ファーム』の鶏舎があります。鶏舎の中に入ってみると、ゆったりした清潔なスペースにケージがずらりと並び、鶏たちが元気にエサを食べています。

鶏舎の中には、元気な鶏がいっぱい!
鶏舎の中には、元気な鶏がいっぱい!

今回取材した『ぼくらの希望ファーム』は、養鶏場を始める前から、養鶏機器の製造・販売を行う会社として養鶏業に関わってきたそうです。創業当初の1975年頃は採卵のための養鶏場が全国で約50万戸あったところ、毎年減少を続けて2012年ではわずか2800戸ほどに激減。小規模な養鶏場は次々と廃業していった一方、大規模化が進み、養鶏場は完全に二極化してしまったそうです。

鶏に愛情を注ぐ養鶏のプロ、松原叔史さん
鶏に愛情を注ぐ養鶏のプロ、松原叔史さん

「こうした時代の流れの中でいろいろな養鶏場を見ているうちに、小さな養鶏場には鶏舎の衛生面などに疑問を持ち、大規模な養鶏場には工場さながらの窓のない鶏舎で温度管理からエサ・水やり、卵の回収などすべて自動管理で行う環境に疑問を感じるようになりました。生き物を育て、食べ物を生産するのに、この環境でいいのか? そこで、安心して食べられる卵を自分たちの納得できる方法でつくってみよう、ということになったのです」と話すのが、『ぼくらの希望ファーム』立ち上げ当初からのスタッフのひとり、松原叔史(よしひと)さん。
こうした想いから、代表者とスタッフたちが廃業した養鶏場の鶏舎を借りて自分たちの満足のいく環境に整え、いよいよ2014年に養鶏をスタート。これが『情熱卵』の始まりでした。

国産米がベースのエサで、見た目も栄養価も差別化

こだわりぬいて配合したエサ
こだわりぬいて配合したエサ

最初に取り組んだのがエサに使われる原料の選択です。通常のエサはアメリカから輸入されたトウモロコシがベースですが、『ぼくらの希望ファーム』では国産の米をベースに厳選した原料を独自に配合しています。とくにこだわったのが“エコフィード”。これは、食料品となる過程で廃棄されたり規格外として処分される食物を利用してつくられたエサのことで、資源の有効活用はもちろん、エサの自給率を向上させる点でも重要な取り組みです。これらの“エコフィード”を1品ごとに仕入れているため、どこで生産・出荷されたものかを把握できて、安心して使えるそうです。

<使用している主なエコフィード>
米・・・北関東、東北産の主食用米で、精米の際に色や形などの品質面で食用米として出荷できなかったもの
大豆・ごま・・・国内の食品加工工場で生産ラインの切り替え時などに不要となったもの
米ぬか・・・山田錦など最高級な酒米を精米する際に出るもの
日本茶・・・静岡県産の茶葉で、色や形など正規品とならないくず茶を集めたもの


エサの原料は安全性や栄養価などを考慮して選んでいるそうです
エサの原料は安全性や栄養価などを考慮して選んでいるそうです

“エコフィード”以外にも、ウコン、ヨーグルト、唐辛子、魚粉、牡蠣殻などを配合。ここに至るまでに県の畜産試験場で何度もエサの栄養価などの分析を行い、試行錯誤を繰り返しながら約1年かけて現在の配合にたどり着いたそうです。

左が『情熱卵白』、右が『情熱卵朱』のエサ
左が『情熱卵白』、右が『情熱卵朱』のエサ

淡いレモン色の黄身の『情熱卵白』は、国産米をベースに20種類を配合。そして『情熱卵朱』は黄身を朱色にするため、さらにパプリカとマリーゴールドを加えた22種類を配合。実際にそれぞれのエサを見せてもらうと、はっきりと2色の違いがわかりました。

2色どちらもヘルシーでビタミンが豊富!
2色どちらもヘルシーでビタミンが豊富!

そして、もうひとつの特長が栄養価。「一般的な卵と比べてビタミンが豊富なうえ、気になるカロリー、糖質、塩分は大幅にカットしています。それは成分分析をした結果、具体的な数値にも表れています。ですから、育ち盛りの子どもたちからお年寄りの方まで、また健康志向の方にも安心してたくさん食べていただけます」と松原さんも自信たっぷりに話してくれました。

おいしい卵にするための最適な環境づくり

つねに蛇口から地下水が流れ出ています
つねに蛇口から地下水が流れ出ています

エサとともに卵の味の決め手が、飲み水だそうです。通常は溜めた水を使うところ、『ぼくらの希望ファーム』では、ミネラル分を含む地下水を鶏舎にくみ上げ、掛け流しの状態で、つねに新鮮な水を与えています。
とくに夏場は、溜めた水の場合、水温が上がりすぎて鶏が水を飲まずに体調を崩すこともあるようですが、掛け流しで水温が安定しているため、健康な状態で夏を越すことができるそうです。

ケージの下のトレイに排泄物が落ちるようになっています
ケージの下のトレイに排泄物が落ちるようになっています

もうひとつ、重要なのが飼育環境。『ぼくらの希望ファーム』は自分たちで設計・製造を手がけた設備でケージ飼育を行い、飼育管理を徹底しているようです。排泄物はケージの下に設置したトレイに落ちるようになっていて、鶏が踏むことはなく衛生的。鶏舎の通路も清潔そのもので、嫌な臭いもありません。
「地面を自由に歩き回れる平飼い(ひらがい)は、運動がしやすくストレスが少ないというメリットがありますが、排泄物の上を歩くので衛生面が心配ですし、伝染病などのリスクもあります。うちは、排泄物はトレイの中だけですから、清潔で掃除も簡単です」

「きれいでゆったりとしたケージの中で、鶏さんたちも元気いっぱいです~」(こくさん)
「きれいでゆったりとしたケージの中で、鶏さんたちも元気いっぱいです~」(こくさん)

また、通常は7羽ほど入れる1つのケージに4羽だけしか入れていないそうで、ケージの中は広々ゆったりしています。ちょうどエサ箱の掃除が終わったあとだったようで、これから鶏たちの食事タイム。松原さんが順々にエサ箱にエサを入れていくと、鶏たちは一斉に顔を出して食べ始めます。
「これもケージ飼育ならではのメリットです。平飼いでは、どの鶏が食欲があるのか、ないのかが分かりにくいですが、1ケージ4羽ずつを見れば、エサを食べる様子や排泄物のチェックなどで、体調を把握することができるんです」
このように、エサと飲み水と飼育環境へのこだわりによって、健康な鶏が育ち、おいしい卵ができるのです。

手作業にこだわり、卵づくりに情熱を注ぐ

養鶏場の1日は、朝早くから始まります。毎日の作業について見せていただきました。


卵を手で回収しながらサイズを選別していきます
卵を手で回収しながらサイズを選別していきます

1.早朝に産まれた卵を回収する

手でひとつひとつ卵の汚れを落としてピカピカに磨きます
手でひとつひとつ卵の汚れを落としてピカピカに磨きます

2.卵を検品しながら、ひとつひとつ磨く

もう一度検品してから6個パックに詰めていきます
もう一度検品してから6個パックに詰めていきます

3.卵を2色別々の箱に詰め、出荷する

昔ながらの攪拌機で配合します
昔ながらの攪拌機で配合します

4.原料を配合して攪拌し、エサをつくる

エサやりしながら鶏の食欲も確認しています
エサやりしながら鶏の食欲も確認しています

5.エサ箱を掃除して手でエサやり

黄身をつかんでもくずれないのは、卵が新鮮な証拠です
黄身をつかんでもくずれないのは、卵が新鮮な証拠です

卵の回収やエサやり、洗浄などは機械化している養鶏場も多いようですが、『ぼくらの希望ファーム』では、あえて手作業です。卵の回収やエサやりの際に、鶏たちの体調不良を見逃さないため。また、卵を機械で洗浄しないのは、殻には呼吸穴があって、ここに洗浄用の水が入ると一気に鮮度が落ちるためだそうです。1つ1つ丁寧に汚れを拭き取り、検品することで、新鮮で安全な『情熱卵』になるのです。
今朝、産まれたばかりの『情熱卵白』と『情熱卵朱』を割っていただきました。みごとな2色の黄身が美しい!そして、新鮮な卵は黄身を手でつかめる程しっかりしています。

『情熱卵』を認めた飲食店と地域活性化へ

大泉町にある『情熱卵』直売所
大泉町にある『情熱卵』直売所

さまざまなこだわりの結集である『情熱卵』は、太田市の隣町・大泉町にある『ぼくらの希望ファーム』直営店で販売しています。毎週水曜日は卵の特売をしていて、地域の人たちに喜ばれているそうです。
さらに、『情熱卵』のおいしさ、栄養価、つくり手の熱意に共感して、食材として取り扱う店舗が増えてきているそうです。

「卵かけご飯、おいしそうです~」(こくさん)
「卵かけご飯、おいしそうです~」(こくさん)

そこで、料理店におじゃまして試食させていただきました。
まずは、シンプルに卵かけご飯。ご飯の上に直に割り入れて、見た目も楽しんでからいただきます。濃厚な味わいなのに、しつこくなく、何杯でも食べられそうなスッキリ感。エサの主原料がお米で、脂質が少ないためかもしれません。

『情熱卵』ならではの2色の卵焼き
『情熱卵』ならではの2色の卵焼き

次は卵焼きをいただきました。『情熱卵朱』は生の黄身と同じような鮮やかなオレンジ色。『情熱卵白』は、黄身を白身と混ぜ合わせて加熱すると、珍しい白い卵焼きになります。これぞ2色の『情熱卵』を活かしたメニューといえます。

ロールケーキは、『情熱卵白』を使うと生クリームと同じような白い スポンジでフルーツが鮮やか。シフォンケーキやプリンは紅白2色が楽しめます
ロールケーキは、『情熱卵白』を使うと生クリームと同じような白い
スポンジでフルーツが鮮やか。シフォンケーキやプリンは紅白2色が楽しめます

また、洋菓子店やレストランでも大人気だそうです。『情熱卵白』は、フルーツの見映えがよくなることから、ケーキづくりに最適。紅白2色のシフォンケーキやプリンなどもユニークです。『情熱卵朱』は、その色鮮やかさでオムライスなどの卵料理にインパクトがあって好評のようです。
ほかにも焼肉店のユッケやビビンバに、居酒屋のだし巻き卵やオムレツに、クレープ店のクレープ生地に、と地元の飲食店に次々と広がり始めています。
「この地で生産しているのに、地元の人は知らない・・・という商品にはしたくないですから、まずは地産地消で、地元の飲食店さんと一緒に『情熱卵』を盛り上げていきたいと思っています」
地域活性化に役立ちたいと、地域のイベントなどにも積極的に出店していくそうです。
また、『ぼくらの希望ファーム』では、生産スタッフに地域の障がい者や高齢者の雇用を推進していて、現在も障がい者1名が鶏舎で働いています。こうした形でも地域に貢献していく考えだそうです。


▶『情熱卵』取り扱い店舗についてはこちらから


生産者・料理人・企業とさまざまなコラボを

「一緒に『情熱卵』を広めていきましょう」と松原さん
「一緒に『情熱卵』を広めていきましょう」と松原さん

今後の展望についてお聞きすると、自分たちのノウハウをどんどん伝授し、各地の生産者を支援することで、『情熱卵』を全国に広めていきたいそうです。
「自分たちが満足できる卵をつくりましたので、品質には自信があります。でも、自分たちだけでは生産量を増やしても限界があります。技術や環境づくりなどはサポートしますので、一緒に『情熱卵』をつくる生産者を増やしていきたいのです。鶏舎の見学も受け付けていますので、ぜひとも実際に見ていただきたいですね」
さらに、新たな卵の開発に向けたエサの研究も継続していくそうです。

「いつでもどこでも食べられるようになるといいです~」(こくさん)
「いつでもどこでも食べられるようになるといいです~」(こくさん)

一方、全国への通販サービスを開始するなど、販売に関してもさまざまな方面で挑戦していきたいとのことです。
「こだわりの料理人や食品加工メーカーなど いろいろなところでコラボレーションして、新商品を開発していきたいですね」と目を輝かせる松原さん。飲食店や加工業者の方とは、いつでも商談に応じるそうです。近い将来、松原さんたちの努力によって、さらに高品質な卵やそれを活用した多彩な加工品が誕生するのではないでしょうか。

厳選された食材をエサにした畜産品を選ぼう

こだわりの卵は、卵かけご飯で食べるのがおすすめ!
こだわりの卵は、卵かけご飯で食べるのがおすすめ!

卵は物価の優等生といわれるほど、安定的に安価で売られていますが、その理由のひとつとして、低コストの輸入されたエサを使った大規模養鶏場のオートメーション化による大量生産・大量販売があげられることが分かりました。価格は少し高めでも、こだわりの養鶏場でつくられた卵には、それぞれおいしさや栄養価、安全性などの特長があるのです。
また、野菜や食肉、魚介類などは国産かどうかで選ぶようにしていますが、卵に関しては国産が当たり前で、それを産む鶏がどんなエサを食べているのか・・・までは考えていませんでした。今後は、できるだけ畜産品のエサへのこだわり、おいしさや安心を届けたいという、つくり手の方々の想いが表れた商品を選びたいと思います。

(Mogu・Maga編集部)
取材協力:ぼくらの希望ファーム