日本の「おいしい!」をさまざまな切り口でお届けしていきます。

2016年7月21日

今回から3人のFANバサダーが順番に、おいしい国産情報を紹介していきます。

命を頂く意味を伝える牛肉
完全放牧野生牛ジビーフを訪ねて

北海道は襟裳岬に近い、様似町にある「駒谷牧場」を訪ねた。国内でも例のない、完全放牧野生牛「ジビーフ」を訪ねる旅である。
完全放牧野生牛
完全放牧野生牛
広大な牧草地を有する「駒谷牧場」
広大な牧草地を有する「駒谷牧場」

完全放牧野生牛は、産まれてから出荷するまで、牛舎で飼うことはなく、昼夜を通して林間放牧され、母牛(繁殖牛)の群れの中に、父牛(種牛)を一緒に飼い、自然に交配させる方法をとっている。
一般的な人工授精とは違う、自然受精、自然分娩、好きな時に好きなだけ母乳を飲んで育つ自然哺育を行い、飼料は、自然に生えている四季折々の野草(笹やヨモギ等)や山菜、牧草等の草のみで育つ。輸入飼料を大量に与える現代の穀物主体の肥育とは、真逆である。
牛たちは、好きな草を求めて、ディズニーランド4個分の牧草地を移動する。その41頭の牛の皮膚は、命の気高さで輝いていた。
完全放牧野生牛「ジビーフ」
完全放牧野生牛「ジビーフ」

牧場で牛たちと出会った後、牧場主である西川奈緒子さんの自宅横にあるBBQハウスで、ジビーフを食べた。近隣で採られた野菜や山菜も焼く。
ジビーフの部位はヒレ肉である。だがヒレ肉と思得ぬほど味が濃い。たとえ専門の肉屋さんでも、黙って食べれば、内モモ肉あたりの部位だと思ってしまうほど、味が濃く、肉質がたくましい。
赤の色が深く、わずかについた脂は、草だけを食べてきた証に、ほんのりと黄色がかっている。食べるに従って、なにか気分が上気してくる。噛むに従って、何枚も食べるに従って、次第に味わいが口の中で膨らんでいくのである。
肉汁が多いわけでもない、鉄分が多いわけでもない、心臓の鳴動が味の中にあって、体を揺さぶるのである。食べ進むごとに、牛の精気が我々の体に送り込まれて、上気する。命を食べるとはこういうことか。

よく僕は、「野性味がある」という表現をしていたが、そのことが恥ずかしくなった。「野性味」なんて、軟弱な都会人の、薄っぺらな想像でしかないことを、この肉は伝える。
それほどにジビーフの味わいは、食の本質を揺さぶるのである。肉を食べる意味とはなんなのかと、人間に答えを突きつけるのである。

今月のFANバサダー
マッキー牧元さん

1955年東京出身。立教大学卒。
㈱味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。
年間600食ほど全国、海外を食べ歩き、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。
著書多数。最新刊は「出世酒場〜ビジネスの極意は酒場で盗め」集英社刊。