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2015年8月28日

発掘!地域のブランド食材 極上の『石垣牛』をいただいてきました!

各地においしいブランド牛がありますが、今回は石垣島で生まれ育った『石垣牛』を取材してきました。

「石垣牛づくし!早く食べたいです~」(こくさん)
「石垣牛づくし!早く食べたいです~」(こくさん)

全国に牛肉のブランドはいくつもありますが、地域ごとに気候や風土、飼育方法、エサなどが異なるため、味わいや食感なども違ってきます。今回ご紹介する極上のブランド牛『石垣牛』をいただく前に、まずは生産地である沖縄の離島・石垣島の『ゆいまーる牧場』を訪ねました。

石垣島の環境と長期肥育で、いい牛が育つ

青々とした牧草が広がるなかで、のびのび育つ牛たち
青々とした牧草が広がるなかで、のびのび育つ牛たち

沖縄本島の那覇から南西に約400km離れた石垣島は、サンゴ礁が広がるペパーミントブルーの海に囲まれ、マングローブの深い緑とサトウキビ畑が続く島です。
昔から子牛の生産が行われていたそうですが、その最大の理由は気候にあるようです。平均気温は24.3℃と冬でも暖かく、年間を通して青々とした牧草が生えているのです。
『ゆいまーる牧場』を経営している金城(きんじょう)利憲社長にお話をうかがいました。

『石垣牛』のパイオニアでもある金城社長
『石垣牛』のパイオニアでもある金城社長

「1年中放牧できて、牧草は年6回刈り取ることができます。北海道で放牧できる時期は石垣島の半分くらいだね。子牛のときに青草をたくさん食べさせて、走らせることで足腰が強くなり、日光をたっぷり浴びて冬も暖かな風に当たってのびのびとストレスなく育つから、骨格も内臓も強くて大きく成長するんです」
こうした気候のなかで生まれた子牛が、全国の肥育農家へ提供されることから、『石垣牛』は各地のブランド牛のルーツといわれているそうです。

牛舎では約200頭の牛を育てています
牛舎では約200頭の牛を育てています

とくに金城社長がこだわるのが長期肥育。通常の肉牛が生後28ヵ月ほどで出荷されるのに対して『ゆいまーる牧場』では35ヵ月〜45ヵ月ほど育ててから、それぞれの牛を最もいい状態で出荷しているといいます。

エサをやりながら、体調も一頭一頭確認するそうです
エサをやりながら、体調も一頭一頭確認するそうです

「おいしいお肉を作るためには、長期肥育が大事。時間をじっくりかけて、しっかり管理して、ていねいに育てた牛の肉は、旨みが違います」と金城社長。

牛たちは35〜45ヵ月間、愛情こめて育てられます
牛たちは35〜45ヵ月間、愛情こめて育てられます

長期になればなるほどエサ代の負担や病気のリスクなども大きくなりますが、“効率”よりも“品質”を大切に、時間とコストと愛情をかけて長期肥育することで、食肉としてのクォリティを追求しているのです。

金城社長の長女・美由紀さん(右から4人目)、3女・明代さん(右から3人目)も従業員とともに牧場で働いています
金城社長の長女・美由紀さん(右から4人目)、3女・明代さん(右から3人目)も従業員とともに牧場で働いています

金城社長の娘さんは4人姉妹で、そのうち3人が現在『ゆいまーる牧場』の仕事に携わっています。そして、お孫さんたちも馴れた様子で牛舎を歩き回り、牛を遊び相手にしていました。
金城社長の『石垣牛』にかける熱い想いとこだわりは、すでに2代目、3代目へと受け継がれているようです。

『石垣牛』が有名になったきっかけは?

「社長さんががんばったから『石垣牛』ができたです~」(こくさん)
「社長さんががんばったから『石垣牛』ができたです~」(こくさん)

金城社長は精肉・食肉加工・流通・レストラン経営など、大阪で20年以上も肉に関わってきた“食肉のスペシャリスト”です。それまでの経験を踏まえて、自分で牛を育てることから携わりたいと、1995年に故郷の沖縄に戻り、石垣島で和牛(黒毛和種)の生産をスタートさせました。
ところが当初は、石垣島で育てた和牛を『石垣牛』として売り出したものの、なかなか相手にしてもらえず、苦労の連続だったとか。沖縄では焼肉というスタイルが一般的ではなかったこと、和牛は高価というイメージがあったこともあり、地元で食べてもらうことすら難しかったようです。

転機となったのが、2000年7月に開催された沖縄サミット。世界にアピールするチャンスだと考え、金城社長は持ち前の営業力で「地元・沖縄の食材としてぜひ石垣島の牛肉を」と外務省に直接掛け合ったのです。その結果、クリントン米大統領、ブレア英首相などが参加した晩餐会のメインディッシュとして『石垣牛』のステーキが提供されました。各国首脳に大好評となり、メディアからも注目を浴びて、『石垣牛』が国内外に発信されることとなったのです。

直営店の『炭火焼肉 金城』で『石垣牛』を味わう

沖縄らしい外観の『炭火焼肉 金城』
沖縄らしい外観の『炭火焼肉 金城』

次は沖縄本島に移動し、中南部の北谷町(ちゃたんちょう)に2001年に開業した『ゆいまーる牧場』の直営店『炭火焼肉 金城』におじゃましました。
赤瓦屋根の上でシーサーが見守る、沖縄特有の建物です。

最高級ロースから切り落としまで、あらゆる部位の『石垣牛』が100g単位で買えます
最高級ロースから切り落としまで、あらゆる部位の『石垣牛』が100g単位で買えます

店内に入ると、入口付近のショーケースにはさまざまな部位の『石垣牛』と、ハムやソーセージなどの加工品が並んでいます。

焼肉用コンロのあるテーブルが並びます
焼肉用コンロのあるテーブルが並びます

奥にはテーブル席が広がり、テーブルごとに炭火焼きのコンロがあるスタイル。メインの焼肉から、すき焼き、ハンバーグ、シチュー、カレー、鉄板焼き、牛丼まで多彩な『石垣牛』のメニューがあります。
さっそく、自慢のメニューをいただきました。

特選ロースステーキ(上)、カルビ(右下)、ミスジ(左下)
特選ロースステーキ(上)、カルビ(右下)、ミスジ(左下)

■焼肉(特選ロースステーキ、カルビ、ミスジ)
「特選ロースステーキ」はA5・4等級の最高級品で、サシ(網目状に入る脂肪)が美しく、見とれてしまいます。最初に脂身から焼き網にのせて、ほどよく焼けたら赤身部分をサッと焼き色がつく程度に焼いて完成。

「いい焼き色になってきたです~」(こくさん) 
「いい焼き色になってきたです~」(こくさん) 

口に入れると、温められた脂の甘みが広がり、トロリと溶けるような軟らかさに感動です。
焼肉の定番「カルビ」も焼き色がつく程度に。あまり聞き慣れない「ミスジ」はウデの部分で、サシがしっかり入っています。
昆布だしにシークワーサーの絞り汁を加えたオリジナルのタレは、甘さを控えたあっさり味なので、肉本来の旨みと脂身の甘みを堪能できます。

「タレがお肉にしみこんで、おいしそうです~」(こくさん)
「タレがお肉にしみこんで、おいしそうです~」(こくさん)

■すき焼き御膳
ロース、バラ、モモなどさまざまな部位の切り落としを使用しているので、それぞれの味と食感を楽しめます。タレには酒かすを入れて、コクを出しているそうです。

じっくり煮込むと旨みが出る、スネやネックなどが使われています
じっくり煮込むと旨みが出る、スネやネックなどが使われています

■ビーフシチュー
スネ、スジ、ネック、ソトモモなどの部位を、牛骨だしでじっくり煮込んでいます。どの部位もトロトロで軟らかく、口の中で溶けてしまうほど。

「ポテトフライに目玉焼き、ニンジン、ピーマンも!付け合わせもたっぷりです~」(こくさん)
「ポテトフライに目玉焼き、ニンジン、ピーマンも!付け合わせもたっぷりです~」(こくさん)

■デミグラスハンバーグ
脂身と赤身のバランスのいいロースを粗挽きにして、つなぎは少なめにした贅沢なハンバーグ。肉のジューシーさが口の中に広がります。

「牛さんを1頭まるごと使いこなすなんて、すごいです~☆」(こくさん)
「牛さんを1頭まるごと使いこなすなんて、すごいです~☆」(こくさん)

メニュー開発の背景には、牛1頭まるごと無駄なく、おいしく食べるという想いがあるそうです。
「いちばんのお勧めは特選ロースステーキですが、『石垣牛』はどこをとっても
それぞれに旨みがあります。命をいただいているので、肉も骨も使い切ります」と料理長の上間卓さんが語ってくれました。

独自のエサにおいしさの秘密があった!

スタッフと一緒に接客する金城社長
スタッフと一緒に接客する金城社長

『石垣牛』のおいしさの、最大の秘密は“エサ”にあるようです。料理長や従業員と一緒に、ユニフォーム姿で厨房や店先に立つ金城社長に、詳しくお聞きしました。

エサにとことんこだわり、おいしい肉に仕上げます
エサにとことんこだわり、おいしい肉に仕上げます

「牧草のほかにも、独自の混合飼料をつくって与えています。その中身はとうもろこし、大豆かす、大麦、ふすま(小麦の外皮)、サトウキビ草がら、糖蜜、泡盛かす、吟醸米の酒かす(白ぬか)など。大豆以外はすべて国産原料です」と胸を張る金城社長ですが、ここに至るまでには試行錯誤を繰り返し、北海道・帯広の畜産センターに飼料の分析を依頼しながら研究を続け、ようやく納得がいく飼料ができあがったそうです。
なかでも、石垣島ならではの原料がサトウキビ。乾燥させた草がらは繊維質が多く、肉の香りがバニラのように甘くなるそうです。また、サトウキビを精糖する際にできる糖蜜は、筋肉がしまる効果があるそうです。

「白ぬかって、まっ白でとってもきれいです~」(こくさん)
「白ぬかって、まっ白でとってもきれいです~」(こくさん)

また、有名な吟醸米からとった酒かすは、専用の機械でパウダー状の白ぬかにして使用しています。白ぬかにはグルカン(ぶどう糖)が多く含まれ、これが分解されると旨み成分であるイノシン酸・グルタミン酸となり、肉が軟らかく、旨みたっぷりになるそうです。

牛への感謝を込めて、金城社長が描いた文とイラスト
牛への感謝を込めて、金城社長が描いた文とイラスト

独自に開発したエサだけに、調達には多くの人の協力が欠かせません。金城社長は牧場名 “ゆいまーる”(沖縄の言葉で“助け合い”の意味)の通り、地域農家との仲間づくりを大切にしています。
たとえばサトウキビ農家とは、分けてもらったサトウキビを牛のエサにし、牧場から提供した牛のフンを堆肥としてサトウキビ畑で役立ててもらう、という循環システムが成り立っているそうです。

『石垣牛』を全国へ、そして世界へ

今後は、もっと多くのお客様に手軽に『石垣牛』を食べてもらえるよう、“1g(グラム)7円デー”などのサービスを企画したり、気軽に手に取ってもらいやすい加工品を充実させるために、店舗の隣に加工場をつくる計画をしているそうです。
近年、沖縄観光が中国でブームになっていることから、増えつつある中国からのお客様のために、中国語の勉強を始めたとか。

甘辛いタレの味がクセになる、ボリューム満点の『石垣牛焼肉弁当』 
甘辛いタレの味がクセになる、ボリューム満点の『石垣牛焼肉弁当』 

さらには、『石垣牛』の知名度を向上させるべく、
羽田空港内で“空弁”として『石垣牛焼肉弁当』を売り出しているほか、東京にもステーキ店を開業する予定があるそうです。
そして将来的には、世界一の牛肉の消費地であるアメリカや、食通が多いフランスへの進出を考えているそうで、2010年にはアメリカで開催された食の国際会議に、また今年6月にはパリの日本食レストランで開催された『石垣牛』の試食会に参加するなど、金城社長の挑戦はとどまることを知りません。

情熱と自然が育てたブランド食材

「地産地消で地域を元気に」と願い、チャレンジを続ける金城社長の情熱と、南の島の太陽と風が『石垣牛』のおいしさの源です。沖縄本島や石垣島を訪れて、またネット販売や取り扱い店舗を探して、みなさんもぜひ『石垣牛』を食べてみませんか?
各地には、まだまだたくさんの隠れたブランド食材があるはずです。
これからもMogu・Maga編集部はブランド食材を探す旅を続けますので、お楽しみに。

(Mogu・Maga編集部)
取材協力:ゆいまーる牧場炭火焼肉 金城