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2016年2月29日

発掘!地域のブランド食材 古くからの名産地・伊勢志摩で『伊勢エビ』をいただいてきました!

三重県伊勢志摩地方を代表する高級食材『伊勢エビ』。そのおいしさの秘密を探るため、実際に現地で取材してきました。

「伊勢エビの料理がたくさんあって豪華です〜」(こくさん)
「伊勢エビの料理がたくさんあって豪華です〜」(こくさん)

『伊勢エビ』は、江戸時代から伊勢志摩地方の名産として知られています。毎年数多くの水揚げがあり、“三重県のさかな”として指定されているほか、三重ブランドとしても認定されています。名前の由来は諸説あるようですが、この地が産地であり、伊勢神宮とゆかりのあることから『伊勢エビ』と名付けられたといわれています。
おいしさはもちろんのこと、長いヒゲのような触覚と曲がった腰の風格ある姿から長寿のシンボルとして昔からお祝い事に欠かせない食材で、お正月に鏡餅の上に飾る地方もあるようです。
そんな海の幸の最高峰『伊勢エビ』をいただく前に、まずは伊勢エビ漁の漁師さんを訪ねました。

菅島(すがじま)はおいしい『伊勢エビ』の宝庫

菅島の漁港から早朝に次々と漁船が出発します
菅島の漁港から早朝に次々と漁船が出発します

『伊勢エビ』は千葉県から南の太平洋沿岸に生息し、伊勢志摩地方では毎年、安定的に水揚げされています。産卵期の保護を目的に5月から9月末まで禁漁していますが、志摩半島の鳥羽沖合に浮かぶ4つの離島は一足早く9月16日が解禁日。この日から伊勢エビ漁がはじまります。獲れた『伊勢エビ』は毎年、伊勢神宮に奉納されます。
離島のひとつ、菅島(すがじま)で伊勢エビ漁を行っている漁師の木下久米夫(きのしたくめお)さんにお話をうかがうため、島に渡りました。菅島は鳥羽から東へ約3kmの沖合に位置する周囲約13kmの自然豊かな漁業の島で、港には大小さまざまな漁船が並びます。

『大漁丸』の船長で伊勢エビ漁の漁師・木下久米夫さん
『大漁丸』の船長で伊勢エビ漁の漁師・木下久米夫さん

このあたりの海はプランクトンが豊富なうえ、外洋の水が流れ込んだ沿岸には天然の岩礁が広がっていて、恵まれた環境の中で貝やウニなど贅沢なものをたくさん食べて大きく育つため、身がしっかりしておいしい『伊勢エビ』が獲れるそうです。
伊勢エビ漁の漁法は刺し網漁。これは『伊勢エビ』の通り道に帯状の網を仕掛けておき、一晩おいてから網を引き上げ、網に絡まった伊勢エビを漁獲する方法です。
実際に伊勢エビ漁を行う木下さんの漁船『大漁丸』に乗せてもらえることになりました。

長年の経験を活かした伊勢エビ漁に同行

夜明け前に出発して、船上で日の出を迎えます
夜明け前に出発して、船上で日の出を迎えます

漁に出るのは、まだ夜明け前。4トンほどの漁船で前日の午後に仕掛けておいた網を引き上げに行きます。『伊勢エビ』は、冬場は寒さで動きが鈍くなって獲れる量も減るそうですが、今日は網にかかってくれているのでしょうか。
木下さんは菅島で漁を営む8代目。『伊勢エビ』をはじめ旬の魚を刺し網漁で獲っているそうです。

魚群探知機を利用すると海中の魚群の存在や水深などを知ることができます
魚群探知機を利用すると海中の魚群の存在や水深などを知ることができます

「18歳から漁をはじめたから、もう50年近くになるね。伊勢エビは昔から刺し網漁だから、長年の勘で網を入れる場所はだいたい分かるんだ。あとは、魚群探知機なども見ながら精度をあげていくんだよ」

電動ローラーを使って網を引き上げるのは息子さんの担当です
電動ローラーを使って網を引き上げるのは息子さんの担当です

現在は、奥様と息子さんと3人で漁に出ています。息子さんは東京海洋大学で学んだ後、9代目の漁師として戻ってきてくれたそうです。
やっと日の出を迎えた頃、ひとつ目の仕掛けポイントに到着。ブイ(海面に浮かせる目印)を頼りに、仕掛けた場所で網をたぐり寄せます。
沈んでいる網は船に取り付けた電動ローラーで引き上げますが、海面に出てきたら『伊勢エビ』や魚が傷つかないよう手で丁寧に船内に引き入れます。

『伊勢エビ』は味だけでなく見た目も大事!

『伊勢エビ』が獲れました!
『伊勢エビ』が獲れました!

引き上げた網には、いろいろな魚が絡まっていました。そして『伊勢エビ』も発見!赤褐色の硬い殻に包まれ、長い触覚が伸びた姿は風格を感じさせます。

触覚や脚が折れないよう扱いは慎重に
触覚や脚が折れないよう扱いは慎重に

手でつかむとギィギィと鳴いているように聞こえます。これは触覚を動かしている音で、威嚇しているといわれているようです。
絡まったものは、傷つけないように1匹ずつ先のとがった道具で丁寧に外す“網さばき”という作業をして、船上の生けすに入れておきます。

「やったです〜!こんなに『伊勢エビ』が獲れたです~」(こくさん)
「やったです〜!こんなに『伊勢エビ』が獲れたです~」(こくさん)

とくに『伊勢エビ』は大きさだけでなく見た目で評価が左右され、触覚や脚が折れると商品価値が下がってしまうそうです。そのため“網さばき”は慎重に行う必要があり、扱いには熟練の技が必要だそうです。
前日に仕掛けてあったポイントは5ヵ所。それぞれのポイントで網を引き上げ、船上で“網さばき”・・・を繰り返し、漁が終わります。
今日の成果は『伊勢エビ』のほか、イシダイ、マトウダイ、カワハギ、メジナ、スズキなどでした。

『伊勢エビ』を知り尽くす漁師ならではの技

獲れたての魚たちはさっそく市場へ出荷されます
獲れたての魚たちはさっそく市場へ出荷されます

漁を終えて港に戻ってからも、まだまだ仕事は終わりません。
まず、水揚げされたものを種類や大きさで選別してカゴに移し、それを島の市場に出荷します。

網の手入れは、木下さん一家のほか親戚の方々も集まって一斉に行います
網の手入れは、木下さん一家のほか親戚の方々も集まって一斉に行います

無事に出荷した後は、網の手入れ。漁で使用した大量の網を一度すべて岸にあげて、海藻やゴミなどを外したり、切れてしまった部分を修繕するなど、根気のいる作業です。岸でたき火に当たり、談笑しながらこの作業を行う人たちの姿は、冬の菅島の風物詩なのだそうです。
こうして手入れした網を持って、午後には仕掛けのためにまた船を出します。早朝からはじまった仕事は、すべての仕掛けを済ませて帰ってくる夕暮れにやっと終わるのです。

「長年の経験で培ってきた漁の技を継承したい」と木下さん
「長年の経験で培ってきた漁の技を継承したい」と木下さん

息子さんもゆくゆくは漁師として独り立ちするようですが、海のどのあたりに『伊勢エビ』が潜んでいるかを熟知し、網を正確に仕掛ける技を習得するまでには、まだまだ経験が必要なのだそうです。
「菅島もだんだん漁師が減っているけれど、息子に技術を継承して、また次の代にも受け継いでいってほしい。私も体が動く限り、まだまだ漁を続けていくつもりだけどね」とパワフルな木下さん。
時には傷ついて出荷できない『伊勢エビ』を自分たちで食べることもあるそうですが、どんなふうに調理するのでしょうか。
「煮て食べることが多かったけれど、最近はフライにするのがお勧めだね」という木下さんのお話を聞いているうちに、早く『伊勢エビ』が食べたくなってきました。

漁協直営の海鮮食堂『魚々味(ととみ)』

特産品の販売店や茶屋も入る『鳥羽 潮騒(しおさい)の駅』のなかにあります
特産品の販売店や茶屋も入る『鳥羽 潮騒(しおさい)の駅』のなかにあります

さっそく『伊勢エビ』をいただくために、菅島から本土に戻って鳥羽市内の海鮮食堂『魚々味』へ。鳥羽磯部漁業協同組合が「旨いものを旨いときに!」をコンセプトに、地元で水揚げされた旬の新鮮な海の幸を多くの方々に味わってほしいと、2008年5月にオープンしました。
店先には、船を使った生けすが置かれ、注文が入るとここから『伊勢エビ』を取り出します。

地元の人にも人気の食堂です
地元の人にも人気の食堂です

そして、店内は木製テーブルが並び、壁一面に地元で獲れる魚に関するポスターがぎっしりと貼られ、いかにも漁協直営の食堂という雰囲気です。
菅島で水揚げされた『伊勢エビ』も、漁港からお店に運ばれてきます。

「伊勢エビ料理が早く食べたいです〜」(こくさん)
「伊勢エビ料理が早く食べたいです〜」(こくさん)

「旬のいまこそ、ぜひ本場の伊勢エビを食べてほしいですね。高価な食材ですが、ウチは儲けより本場の味を知ってもらうことを大事にしていますから、適正価格で提供しています」と、店長の中森周夫(なかもりちかお)さん。
解禁されてから5月初旬まで、『伊勢エビ』料理を食べることができるそうです。

さまざまな『伊勢エビ』料理を堪能!

殻の中から美しい身が出てきます
殻の中から美しい身が出てきます

■お造り
頭部と胴体を切り離し、胴体の腹側にある薄い殻を切り取って身を取り出します。
この身を食べやすい大きさに切り、冷水につけて身を引き締めてから、姿造りに盛りつけて完成です。

「さすが『伊勢エビ』の尾頭付きはカッコいいです〜」(こくさん)
「さすが『伊勢エビ』の尾頭付きはカッコいいです〜」(こくさん)

尾頭(おかしら)付きの堂々とした風格ある姿。透明感のあるお刺身の美しさ。まさに『伊勢エビ』料理の王道です。
いただいてみると、プリッとした食感のあと、とろりとした甘みが口いっぱいに広がり、そのおいしさはいつまでも口の中で余韻となって残っています。新鮮だからこその食感と味わいです。

バーナーの火で炙ると香ばしくなります
バーナーの火で炙ると香ばしくなります

■焼き
真ん中から縦に切り、殻つきのまま炭火で焼きながら、上からバーナーで身の表面を炙って完成です。

盛りつけると豪華さが際立ちます
盛りつけると豪華さが際立ちます

身はプリップリで甘みが引き立ちます。さらに香ばしさが加わり、『伊勢エビ』ならではの磯の香りとうまみを楽しめます。焼いて鮮やかな赤色になった殻つきで、豪華な一品です。

揚げたあとは、油をよく切っておきます
揚げたあとは、油をよく切っておきます

■フライ
身の部分を開いて、衣をつけて2〜3分ほど揚げます。サクサクした食感にするため、生パン粉を使用しています。

「ボリューム満点です〜」(こくさん)
「ボリューム満点です〜」(こくさん)

エビフライのイメージとは違う姿にビックリ!漁師の木下さんに聞いたときは、『伊勢エビ』をフライにしてしまうなんて、もったいない・・・と思ったのですが、ひと口かじってみると、プリッとした食感はもちろん、うまみがしっかり閉じ込められていて、『伊勢エビ』をがっつりと堪能できます。

じっくり煮て殻からうまみ成分を出します
じっくり煮て殻からうまみ成分を出します

■味噌汁
頭部を殻ごとぶつ切りにして、水とともに鍋に入れて火にかけます。アクをとりながらしばらく煮て、赤だしを溶き入れて完成です。

食べ応えのある大きなお椀
食べ応えのある大きなお椀

殻からうまみ成分がふんだんに出るうえ、頭部のミソも溶け出して、磯の香りと濃厚なうまみを存分に堪能できます。大きな器にドカンと『伊勢エビ』が入っていて迫力満点。味噌汁というより、単品メニューのお椀のイメージです。

『伊勢エビ』そのものの味を活かすメニュー構成
『伊勢エビ』そのものの味を活かすメニュー構成

これだけ『伊勢エビ』のさまざまな料理を味わえるなんて贅沢そのもの!食べていると幸せな気持ちになってきました。
これらの料理とご飯、小鉢、漬け物がつく『伊勢エビ御膳』のほかに、『伊勢エビ天丼』や単品の『伊勢エビ』お造りや味噌汁も。お造りを食べてから、その殻を使った味噌汁を追加するという注文もできます。
『伊勢エビ』料理は素材そのものの味を活かすため、あえてシンプルな調理法にしているそうです。
「懐石料理のようなものではなく、漁師のおかみさんの手作り料理をイメージしているのです。素材勝負ですから」と中森さんも『魚々味』らしい『伊勢エビ』メニューを自信を持って勧めてくれました。

旬の魚のおいしさを伝えていくために

その日に獲れたばかりの魚がお刺身になります
その日に獲れたばかりの魚がお刺身になります

もうひとつ、漁協直営ならではの特長が“本日のお刺身”。魚々味定食や組合長定食などについてくるお刺身は、その日の漁によって魚の種類が異なり、店先のホワイトボードに魚の名前が書かれています。いつでも、その日の朝に水揚げされた旬の魚を安く味わえるのが、地元の人たちにも観光客にも人気のようです。
また、この地域はいまも海女さんたちによるアワビ漁がさかんだそうで、高級食材の『伊勢エビ』と『アワビ』を求めて来店する観光客も多いようです。

「魚の名前や本当の旬、おいしさを多くの人に伝えていきたい」と中森さん
「魚の名前や本当の旬、おいしさを多くの人に伝えていきたい」と中森さん

「魚の本当の旬を知らない方がけっこう多いですね。伊勢エビは秋から冬、アワビは春から夏が旬ですから、なかなか一緒には食べられません。また、いろいろな魚を扱っているので、知らないお客様には説明します。こうして会話をしながら、魚介類の旬やおいしさを知っていただけるよう努力しています」と中森さん。魚離れを食い止めるためにも、そして地元の漁師たちを支えていくためにも、このお店の存在意義があると考えているそうです。

国産の魚介類をもっと食べよう!

伊勢志摩地方は魚介類の宝庫です。長年、海に出て漁を続ける木下さんからも、旬の新鮮な魚を提供しながらおいしさをアピールする中森さんからも、自分たちの地元を大切にし、おいしい食材を特産品として大切に育み、全国の多くの方々に届けたいという想いが伝わってきました。
ぜひ、今年5月のサミット開催地として注目されている伊勢志摩に足を伸ばして、本場の『伊勢エビ』を食べてみませんか?
海に囲まれた日本には、各地に特産となる海の幸があります。今後は、日本の漁業を応援するためにも、もっと国産の魚介類を積極的に食べようと思いました。
全国には、地元が誇る魅力的な食材がまだたくさんあるはずです。今後もMogu・Maga編集部は、国産の食の魅力を見つけてご報告しますので、ご期待ください。

(Mogu・Maga編集部)
取材協力:『大漁丸』船長 木下久米夫さん、四季の海鮮 魚々味三重県鳥羽磯部漁業協同組合