日本の「おいしい!」をさまざまな切り口でお届けしていきます。

2015年6月15日

国産素材にどこまでこだわる? 『日本の食パン』について取材してきました!

その名も『日本の食パン』という、国産素材にこだわった食パンを新発売した第一屋製パンにお話を伺ってきました。しっかり試食もさせていただきました!

「国産素材にとことんこだわった食パンさんです~」(こくさん)
「国産素材にとことんこだわった食パンさんです~」(こくさん)
国産素材約95%の“しっとり”“もっちり”な食パン

第一屋製パンは、北海道産小麦や新潟県産米・秋田県産米など国産素材を約95%使用した『日本の食パン』を発売しました。
どうしてこれだけ国産素材の割合を高めることができたのか、どんな開発の経緯があったのか、どんな味と食感なのか、聞きたいことがいっぱい。さっそく本社におじゃまして、商品開発の中心人物である商品開発部R&Dグループ グループリーダーの鈴木努さんを直撃しました。

『日本の食パン』の開発の中心人物である商品開発部R&Dグループ グループリーダー、鈴木努さん
『日本の食パン』の開発の中心人物である商品開発部R&Dグループ グループリーダー、鈴木努さん

「お客様から国産素材を使った食品への要望が増えていますし、健康志向も高まっています。そこで小麦粉を国産のものにし、米粉を配合して試作を繰り返していたときに、米をピューレ状にしたコメネピュレと出会い、素材に加えてみました。すると、しっとりとした食感が出て、米の甘みともっちり感のある米粉のよさを引き出してくれることが分かり、素材のひとつに決めました。

こうして、コメネピュレを開発したネピュレさん、生産者の大潟村あきたこまち生産者協会さんと弊社の3社のコラボレーションにより、米の甘みや“しっとり”“もっちり”とした食感が特長の『日本の食パン』が完成したのです。小麦と米のほかに砂糖も国産素材にこだわっています。また、イーストフードと乳化剤は使用していません」(鈴木さん)
実際に小麦粉、コメネピュレ、米粉を見せていただきながら、それぞれの素材について説明していただきました。

北海道産小麦・・・
もっちりとした日本人好みの食感を作り出しています。

コメネピュレ・・・
秋田県産米のピューレで、米の甘みに加え保湿性があるためしっとりとした食感を生み出しています。(『フード・アクション・ニッポン アワード2014』の商品部門最優秀賞を受賞)

米粉・・・
新潟県産で通常の米粉より風味と甘みが強いのが特長です。

「これが『日本の食パン』に使っている小麦、コメネピュレ、米粉ですか~」(こくさん)
「これが『日本の食パン』に使っている小麦、コメネピュレ、米粉ですか~」(こくさん)

主な素材をすべて国産にしたわけですが、通常の食パンはどのくらい国産素材を使っているのでしょうか。
「弊社の食パンでいうと、国産素材の割合は40~50%くらいですね。ですから95%というのは画期的です。油脂に国産バターを使用すればもっと割合が上がるのですが、バターの風味が強すぎて米の風味を損ねてしまうことから、味を優先してあえてバターは使用しませんでした。すべての基本は“おいしいこと”ですから」(鈴木さん)

素材選びと配合で試行錯誤

おいしさを最優先しながら国産素材にもこだわった『日本の食パン』ですが、完成までにはいろいろご苦労もあったのではないでしょうか。
「はい、かなりの試行錯誤がありました(笑)。まずは素材選びですが、ひと口に国産といってもどの産地の小麦や米粉を使うか、それぞれの特徴を見極めながら厳選しました。次は小麦、米粉、コメネピュレなどの配合です。ラボで手作業で配合するとうまくいくのですが、いざ工場のラインでテストしてみるとうまくいかず、またラボに持ち帰る…の連続でした」(鈴木さん)
鈴木さんとともに、製造の立場から開発に取り組んできた工場長の花田大幸さんも、当時を振り返ってくれました。

製造の責任者として『日本の食パン』の開発に関わってきた工場長の花田大幸さん
製造の責任者として『日本の食パン』の開発に関わってきた工場長の花田大幸さん

「国産小麦の新品種が開発されたり、米粉の製法が進化して“粒度(りゅうど)”という粉の細かさが向上してきたため、製パンでも使いやすくなってきました。それでもミキシングしてラインに乗せると粘り気が強すぎて、なかなかいい生地ができない。

ラボで手作りする小ロット、ラインで小規模に製造する中ロット、そして量産できる大ロットの3段階でテストするんですが、小・中・大ロットでの試作を2ヵ月の間に数十回も繰り返して、やっと味、香り、食感の納得できるものができました」(花田さん)

製造工程の中で季節による変化に対応

『日本の食パン』を製造している第一屋製パン高崎工場
『日本の食パン』を製造している第一屋製パン高崎工場

ところで、食パンはどうやって作られるのか、おおまかな製造工程を教えていただきました。

パン生地を型に入れて最終発酵させる
パン生地を型に入れて最終発酵させる

1)
素材の一部をミキサーで混ぜ合わせて中種(なかだね)を作る
2)
中種を発酵室で発酵させる
3)
中種にさらに素材を加えてミキサーでこねてパン生地にする

200~230℃のオーブンで焼く
200~230℃のオーブンで焼く

4)
生地を分割する
5)
中間発酵させる
6)
生地を伸ばして成形し、型に入れる

焼きあがったら型から出して自然に冷ます
焼きあがったら型から出して自然に冷ます

7)
最終発酵させる
8)
オーブンで焼く
9)
型から出して冷ます

スライス、包装したものを箱詰めしていよいよ出荷
スライス、包装したものを箱詰めしていよいよ出荷

10)
スライスして包装する
11)
箱詰めして出荷する

素材とその配合が決まったあとは工程通りに製造していくだけかと思ったのですが、花田さんによるとそう簡単でもないようです。

「季節にあわせて作り方も調整するなんて、とってもたいへんです~」(こくさん)
「季節にあわせて作り方も調整するなんて、とってもたいへんです~」(こくさん)

「『日本の食パン』は2月に発売したばかりで、まだ四季を経験していません。間もなく梅雨を迎えますし、夏、秋と外気温や湿度が変化すると生地にも影響が出ます。生地の出来ばえを安定させるために、こね方を変えるなどこれからも試行錯誤の繰り返しです」(花田さん)

パン生地は思った以上に繊細です。また、詳細は企業秘密ということですが、『日本の食パン』の製造にはもっと細かい工程がたくさんあり、パン作りのプロたちの技が随所に活かされているようです。

ネーミングや包装にもこだわった自信作

風呂敷で包むイメージと日本の伝統色で、和のデザインにこだわったパッケージ。素材のコメネピュレがアワードを受賞したことを示すロゴマークも記載されています。
風呂敷で包むイメージと日本の伝統色で、和のデザインにこだわったパッケージ。素材のコメネピュレがアワードを受賞したことを示すロゴマークも記載されています。

斬新なネーミングと和をイメージしたパッケージもかなりインパクトがあります。
数多くの案の中から社内で検討を重ね、最もシンプルにストレートに国産素材使用をアピールするものとして、このネーミングが選出されたそうです。パッケージは風呂敷で包むデザインに決定。色も日本の伝統色である桃染(ももぞめ)、蕾紅梅(つぼみこうばい)、真朱(まそお)の3色をグラデーションにしているとのことです。

お二人を中心に、社員一丸となって商品化に取り組んだそうです
お二人を中心に、社員一丸となって商品化に取り組んだそうです

「すごい商品名になってプレッシャーがかかりましたね。また、包装は本当の風呂敷でやれないか、という話が出たくらいデザインにこだわりました」(鈴木さん)
こうして完成した『日本の食パン』は、社員一丸となって開発から商品化に取り組んだためモチベーションアップにつながり、みんなの自信となっているそうです。

これは単なる社内の自己満足ではありません。その証拠に、主にお叱りの電話がくるお客様相談室に、『日本の食パン』がとてもおいしかった、子供に安心して食べさせられる…などのお褒めの電話があったそうです。
「これが基準となったおかげでレベルが上がり、今後の商品開発の難易度も上がってしまいましたね(笑)」(花田さん)
開発スタッフの方々のうれしい悲鳴が聞こえてきそうです。

さまざまな企業とコラボしながら生産者も支えたい

『日本の食パン』は、鈴木さんの開発者魂や花田さんの職人の技はもちろんのこと、北海道産小麦、コメネピュレ、米粉などの生産者や販売メーカーの協力があってこそ、誕生したものといえます。それだけに『日本の食パン』を一過性に終わらせることなく、ロングセラー商品にしていくことをめざしているそうです。

「国産素材を使うことは、農家さんたちをまもることにもなるです~」(こくさん)
「国産素材を使うことは、農家さんたちをまもることにもなるです~」(こくさん)

「さまざまな企業に協力していただきながら国産素材を使用した新商品の開発に取り組み、消費者の皆さんに安全・安心でおいしい商品を提供するとともに、日本の農家を支えていきたいと思います」(鈴木さん)

今後さらに国産素材を追求し、多方面の企業とタッグを組みながら、消費者も生産者も元気にしていくことが第一屋製パンの姿勢だといえます。

もっと国産素材にこだわった商品を選ぼう

ふっくらふわふわのパンからは甘みのある香りが漂います
ふっくらふわふわのパンからは甘みのある香りが漂います

ここまでお話を聞いたうえで、いよいよ試食タイム!『日本の食パン』のパッケージを開くと、その瞬間に甘みのある香りがしてきました。
「通常の食パンのような開けたとたんに感じる発酵臭が少なく、素材そのものの香りをお楽しみいただけます。」(鈴木さん)

「しっとり、モチモチ!お米の甘みがしてとってもおいしいです~」(こくさん)
「しっとり、モチモチ!お米の甘みがしてとってもおいしいです~」(こくさん)

口に入れてみると確かにしっとり感があり、さらに、かんでいるうちにモチモチした食感とともに口の中に甘みが広がってきます。これはおいしい!
「トーストする場合は、軽く表面を焼く程度にしていただくと、まわりはカリッと中はもっちりとした食感が楽しめます」(花田さん)
さっそく家に帰ったらトーストして食べてみます!

最近では『日本の食パン』をはじめ、国産小麦を使ったパンが増えてきているように、さまざまな商品で、国産素材にこだわる動きが広がりつつあります。パッケージに書かれた「国産○○使用」は、おいしさも、日本の食の未来も、どちらも大切にするつくり手の皆さんの想いの表れです。 そんなメッセージを店頭で読みとりながら、商品を選ぶように心がけてみませんか?

(Mogu・Maga編集部)
取材協力:第一屋製パン