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2015年10月28日

発掘!地域のブランド食材 日本固有のぶどう『甲州』をいただいてきました!

ぶどうの品種は豊富ですが、今回は日本で1000年もの歴史があると言われている『甲州(ぶどう)』を取材してきました。

「ぶどうでできたものがいっぱい!色もカラフルです~」(こくさん)
「ぶどうでできたものがいっぱい!色もカラフルです~」(こくさん)

秋の果物の代表格でもあるぶどうは、その品種の多さも特徴のひとつです。今回は日本最古の品種である『甲州』をはじめ約48種のぶどうを生産・販売し、ぶどうの加工品も提供する山梨県甲州市の『ぶどうばたけ』を訪ねました。

この地の環境がぶどうをおいしくする

6ヘクタールのぶどう畑が広がります
6ヘクタールのぶどう畑が広がります

山梨県はぶどうの生産量が日本一で、全体の約4割を占めています。なかでも『ぶどうばたけ』のある甲州市勝沼町は、古くからぶどうの一大産地として有名。どうしてここまでぶどうの産地として発展したのでしょうか。『ぶどうばたけ』の三森斉(みつもり ひとし)社長にお伺いしました。
「このあたりは標高300mから600mくらいの南西向きの斜面にぶどう畑が広がります。この斜面のおかげで水はけがよい、風通しがよい、日当たりがよいという好条件が揃っています。

高低差があることで場所によって10日から2週間ほども生育時期が異なるため、長い期間収穫できることや収穫作業の分散化ができることも利点です。また、昼夜の温度差が大きいことで、ぶどうの色づきがよくなります」
こうしたさまざまな環境が、ぶどうをおいしくしているのです。

日本最古のぶどうの品種『甲州』

赤紫の粒が美しい『甲州』
赤紫の粒が美しい『甲州』

いま、国産ぶどうは50種を超える品種がありますが、『甲州』はこの地で栽培が始まったとされている日本最古の品種です。果皮は赤紫色、粒は小さめ、果肉はやわらかく、甘みと酸味のバランスのとれた素朴な味わいが魅力です。
『甲州』の発祥については2説あり、1つは奈良時代の718年に大善寺の僧が発見したという説、もう1つは1186年に勝沼の住民である雨宮勘解由(あまみや かげゆ)という人が発見したという説。どちらにしても800年から1300年前には食されていたようです。
甘いものが希少だった江戸時代では、果物は糖の吸収が速く、ぶどうはとくに糖度が高いことから、『甲州』は滋養強壮剤としても親しまれ、馬で7日ほどかけて江戸に出荷されたそうです。その後、明治中期に中央本線が開通したおかげで都市部への出荷量も増え、『甲州』の生産が一大産業となりました。

『甲州ワイン』は日本独自のワイン
『甲州ワイン』は日本独自のワイン

その頃、『甲州』を使ったワイン醸造もはじまり、『甲州』は生食用のほか、ワイン原料としてもなくてはならない存在となっていきます。
近年では、『巨峰』や『ピオーネ』『シャインマスカット』など大粒で甘みが強い品種の人気が高まったことや、すっきりさわやかな味わいの『甲州ワイン』が日本にしかないワインとして、ヨーロッパなどで高い評価を得ていることから、『甲州』は約90%がワイン原料となっているそうです。また世界的な和食ブームのなか、和食に合うワインとしても、人気が高まっているようです。

色、形、味、香り、歯ごたえの多様さが魅力

ぶどう農家の長男として家業を継いだ『ぶどうばたけ』の三森社長
ぶどう農家の長男として家業を継いだ『ぶどうばたけ』の三森社長

三森社長は、サラリーマン生活を経験した後に家業を継ぐため、この地に戻ってきました。三森家は江戸時代から続く古い農家で、三森社長はその17代目。ぶどう農家としては4代目。10年ほど前に法人化して、奥様と10人のスタッフとともにぶどうづくりに取り組んでいます。
現在、生産しているぶどうの品種は、『甲州』をはじめ『巨峰』『ピオーネ』『デラウェア』『甲斐路』『ロザリオ』『シャインマスカット』など、なんと48種類!これだけの品種をつくっているのは、甲州市内でも珍しいそうです。そこには、果物の中でもとくに種類が多く、色や形、味、香り、歯ごたえなどが異なるバラエティ豊かなぶどうの魅力を知ってもらいたいという三森社長の想いがありました。

「色も形もいろいろで、どれもおいしそうです~」(こくさん)
「色も形もいろいろで、どれもおいしそうです~」(こくさん)

「ぶどう狩りに来てくださるお客様の約80%がリピーターで、もっと違う種類を食べたいというご要望に応えていたら、こんなに種類が増えてしまいました。新品種のぶどうが完成するまで3年から5年はかかりますから、安定してつくれるようになるまでが大変です」

ぶどうづくりは、ほとんどが手作業

収穫したぶどうも、粒をしっかりチェックします
収穫したぶどうも、粒をしっかりチェックします

7月から11月までのぶどうの収穫期は大忙しですが、年間を通してぶどうづくりにはさまざまな農作業が必要です。
収穫後の秋から冬にかけては土壌の管理や枝の剪定(せんてい)、春は発芽の手入れ、梅雨時期には成長のいいぶどうだけを残す間引き、鳥・虫よけ、葉の消毒よけのためのぶどうの袋かけのほか細かな作業がたくさんあり、そのほとんどが手作業となります。
なかでも、収穫前に畑にあるすべてのぶどうの房を1つ1つ見て、キズのある粒や密集しすぎている部分の粒を摘み取ることなどは、とくに手間のかかる作業だそうです。

収穫期は、スタッフ総出で休みなく作業を続けます
収穫期は、スタッフ総出で休みなく作業を続けます

収穫期となると、畑での収穫作業に加えて出荷作業も大変です。
作業場では、畑から運ばれてきたコンテナと、出荷用のコンテナが積み上げられていました。収穫したてのぶどうは1つ1つ点検し、キズのある粒があればハサミで取り除きます。重さをはかり、品種ごとに仕分けて最後に箱詰め。収穫期は毎日、この作業を延々と繰り返すそうです。

畑を見て試食してもらうのがいちばん!

直売店に並んだぶどうは品種が多く、食べ比べが楽しめます
直売店に並んだぶどうは品種が多く、食べ比べが楽しめます

『ぶどうばたけ』では、直売店で試食・販売をしているほか、ぶどう狩りも実施しています。
まずは、直売店で旬のぶどうを味見。時期によって品種は異なりますが、7月下旬〜11月上旬までは、つねに10種ほどが直売店に並び、食べ比べることができます。

「ボクが選んだぶどうを三森社長がとってくれたです~」(こくさん)
「ボクが選んだぶどうを三森社長がとってくれたです~」(こくさん)

ぶどう狩りをする場合は、店の奥の広大なぶどう畑へ。プロの案内のもと、ぶどう棚の下で説明を受けながら好みのぶどうを自分で収穫することができます。

「『甲州』も食べ頃です~」(こくさん)
「『甲州』も食べ頃です~」(こくさん)

「実際に足を運んでくださるお客様には、ぶどうづくりについて、ていねいに伝えながら畑や作業場を見てもらい、採れたてを試食してもらいます。そうすることで、味も価格も納得していただける。これがいちばん大切だと思っているんです」
と話す三森社長。ぶどうづくりへのこだわりと、味への自信が感じられました。

ぶどうをおいしく食べるアレンジメニュー

ぶどう狩りのあと、ゆっくりテラスでくつろげます
ぶどう狩りのあと、ゆっくりテラスでくつろげます

直売店のすぐ隣にあるのが、オープンテラスの『カフェぶどうばたけ』。奥の作業場からぶどうの甘い香りが漂うテーブル席で、『ぶどうばたけ』で育ったぶどうを使ったさまざまなメニューを味わうことができます。
原料となるぶどうの品種も多彩で、味も色もバリエーション豊か。さっそくいただいてみます!

ジェラートの味は『甲州』(左)、『甲斐路』(上)、『巨峰』(右)
ジェラートの味は『甲州』(左)、『甲斐路』(上)、『巨峰』(右)

■ぶどうのジェラート
ピューレ状にした生食用のぶどうをふんだんに使ったジェラートは、ぶどうそのものの味わいが口の中に広がります。甘みと酸味のバランスが魅力の『甲州』、甘みが強くて上品な『甲斐路』、甘みも香りも濃厚な『巨峰』、凝縮した深い味わいの『ベリーA』、上品でさわやかな味の『ロザリオビアンコ』と、5種類の味を楽しめます。

左から『甲州』『ピオーネ』『デラウェア&甲州』『巨峰』
左から『甲州』『ピオーネ』『デラウェア&甲州』『巨峰』

■ぶどうジュース
もちろんストレート果汁100%。収穫した生食用のぶどうをたっぷり使用した贅沢なジュースです。時期によって品種は異なりますが、『甲州』『ピオーネ』『デラウェア』『巨峰』『べリーA』などを単体、またはミックスしてジュースにしていて、それぞれの味わいを楽しむことができます。
飲むと、まるでフレッシュなぶどうを食べているような濃厚な味わい!

生地は米粉100%なので、アレルギーのある方も安心です
生地は米粉100%なので、アレルギーのある方も安心です

■米粉のシフォンケーキ
小麦粉の代わりに米粉100%でつくったシフォンケーキ。生地にぶどうのピューレをふんだんに練り込んでいるため、口に入れた瞬間、ぶどうの香りが広がります。プレーンのほかに、ぶどうを乾燥させたレーズン入りもあり、ふわふわした生地にレーズンの味と歯ごたえがアクセントになっています。

自家製レーズンだから添加物もなくヘルシーです
自家製レーズンだから添加物もなくヘルシーです

■レーズン
干しぶどうは、すべて『ぶどうばたけ』で加工しているため、無着色、無香料、無添加。生食用のものを乾燥させるため、そのままでおいしいぶどうのうまみがさらに凝縮されて濃厚な味わいです。『デラウェア』『甲斐路』のほかに、収穫期によって異なる4種のアソートもあり、レーズンの食べ比べが楽しめます。

グラノーラでもレーズンの味が引き立ちます
グラノーラでもレーズンの味が引き立ちます

■グラノーラ
最近、ヘルシーな朝食として人気が高まっているグラノーラに、レーズンを加えました。オーツ麦、クルミ、かぼちゃの種、ひまわりの種、干し柿が入っていて、香ばしさのなかにレーズンと干し柿の甘さが引き立っています。
牛乳やヨーグルトにかけて食べるのが定番です。

『ぶどうばたけ』オリジナルの加工品はお土産におすすめです
『ぶどうばたけ』オリジナルの加工品はお土産におすすめです

これらのほかにも、ジャムやコンポート、ワインなどぶどうを使った加工品が店内の壁に並びます。
「ジャムやレーズン、ワインは自分たちで加工まで手がけています。今後もっと加工品を増やして、生食用とあわせて1年中、ぶどうのおいしさを楽しんでもらいたいですね」
と三森社長はますます意欲的です。
また『カフェぶどうばたけ』では、ぶどうのメニュー以外にも、夏は自家製の採れたて野菜を使った夏野菜カレー、秋から冬は自家製の味噌でつくる山梨名物『ほうとう』などの食事も提供しています。

ぶどうづくりを次世代につなげたい

さまざまな仕事をこなすバイタリティあふれる三森社長
さまざまな仕事をこなすバイタリティあふれる三森社長

日々の農作業から経営、営業、経理など、なんでもこなすスペシャリストの三森社長。今後についてお聞きすると
「まずは、山梨のぶどうのおいしさをもっと知ってもらいたいですね。年間30日は、イベント出店などに出かけるつもりです」と、活動範囲を広げて新たなチャレンジを続けていくようです。
さらに、「お客様のニーズに応えて多くの品種をつくること、加工品も含めて販路を広げていくこと、日本古来の『甲州』を作り続けることなどを通して、ぶどうづくりを次世代へつなげていきたいですね」と力強く語ってくれました。
三森社長のような熱意ある農家の方々の取り組みが、日本の農業の未来を支えているのではないでしょうか。

気候風土が育んできたブランド食材

この地の気候風土と先代からの努力と熱意で約1000年前からつくり続けられている『甲州』は、日本固有の誇れる食材です。まずは、そのままで味わってみてください。『甲州』ならではの甘みと酸味のほどよいバランスは、昔ながらの懐かしいおいしさです。また、ジェラートやジュースで味わっても、『甲州』らしさが存分に楽しめます。さらに、たくさんの品種がある国産ぶどうをあれこれ食べ比べするのもおすすめです。
今回、改めて国産ぶどうの品種の多さと、これらをつくる生産者の想いを知ることができました。
甲州市のぶどうのように、各地にはまだまだたくさんのブランド食材があるはずです。
Mogu・Maga編集部は、これからも全国のブランド食材を見つける旅を続けていきますので、ぜひご期待ください。

(Mogu・Maga編集部)
取材協力:ぶどうばたけ甲州市商工会