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2015年7月23日

発掘!地域のブランド食材 極上『うなぎ坂東太郎』をいただいてきました!

土用の丑の日に食べるものとして親しまれているのがうなぎです。そこで今回、極上のブランド養殖うなぎ『坂東太郎』について取材してきました。

「これがブランドうなぎ『坂東太郎』の蒲焼きです~」(こくさん)
「これがブランドうなぎ『坂東太郎』の蒲焼きです~」(こくさん)

今夏の土用の丑の日は、7月24日と8月5日の2回あります。そもそもどうして土用の丑の日にうなぎを食べるのか。これには諸説あるようですが、江戸時代に夏場の売れ行き不振に困ったうなぎ屋が平賀源内(科学者)のアイデアで“本日土用の丑の日”と看板に掲げたところ大繁盛し、ほかのうなぎ屋も真似するようになって、うなぎを食べる風習が定着したというのが有名な話です。究極の養殖うなぎをいただく前に、まずは『坂東太郎』の養殖・卸売・販売を行う千葉県・銚子の忠平本社におじゃましました。

『坂東太郎』の味へのこだわりは?

忠平の前身である高安忠平商店の創業はなんと慶応3年(1867年)。160年もの歴史のある会社で、当初は川魚を扱う問屋でした。日本では明治中期にうなぎの養殖が始まり、昭和に入るとさかんになってきたため、高安忠平商店でも養殖うなぎを中心に卸売・販売を行うようになったそうです。1990年に忠平と社名を変更。現在の高安道征社長は5代目となります。高安社長に『坂東太郎』誕生までのいきさつをお聞きしました。

こだわり続けて『坂東太郎』を作った5代目の高安社長
こだわり続けて『坂東太郎』を作った5代目の高安社長

「天然うなぎが年々減り、30年ほど前からほとんどが養殖になりました。
さらに、需要の拡大も重なってエサが不足してきたため、輸入に頼るようになってきました。すると、どんどんうなぎのレベルが下がってしまった。これではいけないと思い、おいしい養殖うなぎの研究を始めました。天然うなぎが好むものを参考に、海のり、オキアミ、川エビ、コマセなど、ありとあらゆるものを試しました。

本社工場には加工場や、うなぎを出荷まで保管する立場(たてば)などが併設されています
本社工場には加工場や、うなぎを出荷まで保管する立場(たてば)などが併設されています

その結果、生きたアジがベストだと判断し、ホワイトミール(白身魚)に生アジのすり身を練り込んだ独自のエサを開発したのです。ここまで来るのに10年以上かかりました。一般的な養殖うなぎはブラウンミール(青身魚)にイワシなどを混ぜています。それと比べるとコストはかかりますが、うなぎ本来のうま味には自信があります」
試行錯誤の末に見つけたこだわりのエサに、おいしさの秘訣があるようです。

ブランド名の『坂東太郎』に込められた想いとは?

書道家に依頼した文字をブランドロゴにしたそうです
書道家に依頼した文字をブランドロゴにしたそうです

『坂東太郎』というブランド名もインパクトがありますが、どんな由来があるのでしょうか。
「もともと『坂東太郎』というのは、関東平野を流れる利根川の愛称なんです。昔から利根川の汽水域で獲れる天然うなぎがおいしいといわれていたので、それに限りなく近い味わいをめざそうということで、この名前を付けました」と高安社長。コンセプトをダイレクトに表現した『坂東太郎』のブランド名が、いまや全国のうなぎ通に知れ渡るようになったのです。

取引先は信頼できる料理店だけを厳選

全国にファンを持つ『坂東太郎』ですが、実際に食べられる料理店は、現在のところ忠平の直営店を含め全国にわずか25軒です。一般的な養殖うなぎより希少性が高いだけに、取引先を制限しているのでしょうか。

「社長のおかげでこんなにおいしいうなぎさんができたです~☆」(こくさん)
「社長のおかげでこんなにおいしいうなぎさんができたです~☆」(こくさん)

「供給量の問題もありますが、生きたままのうなぎを卸すので、仕入れた当日中に必ずお客様に提供するという条件を設定しています。それから、実際に料理店のオーナーさんや店長さんとお会いして、じっくりと話し合い、私たちのうなぎに対する想いに共感してくれるところとだけ取引するようにしています」

『坂東太郎』を多くの人に食べてほしいけれど、丹精込めて育てたうなぎは信頼できる料理店できちんと調理されたものを味わってほしい、という『坂東太郎』への熱い想いの表れだと思います。

おいしいうなぎを工場から全国へ

立場にあるうなぎのザルには、常に新鮮な水が流れています
立場にあるうなぎのザルには、常に新鮮な水が流れています

忠平では『坂東太郎』以外にも、各地から厳選された養殖うなぎを取り扱っており、真空パックの蒲焼きや白焼きなどの商品も販売してます。工場内の加工場をのぞいてみると、社員の方が手際よくうなぎを加工している中、素人目に見てもおぼつかない手つきでうなぎをさばく青年を発見。忠平では蒲焼き職人の育成のために『蒲焼き学校』を開校しているとのことで、この青年は蒲焼き学校の生徒でした。「うなぎの職人は“串打ち3年、さばき8年、焼き一生”といわれる厳しい世界ですが、それではいつまで経っても職人が育たない、職人を育てることでうなぎ業界を盛り上げたい、と思い始めました。生きたうなぎのつかみ方から始まり、さばき方、焼き方、蒸し方など、蒲焼きに必要なすべての技術を、30日間集中コースで習得させます。ただ、技術は教えられても、本人の気持ちがともなわなければ、職人として一人前にはなれません」
卒業後は、料理店に就職したり、家業を継いだり、独立したり、それぞれの場で活躍しているそうです。

「ピチピチ元気なうなぎさんが全国に届けられるです~ 」(こくさん)
「ピチピチ元気なうなぎさんが全国に届けられるです~ 」(こくさん)

加工場の横には、養殖池から運ばれてきた生きたうなぎを産地やサイズ別に分けたザルに入れて流水にさらす立場(たてば)があります。ここで保管し、それぞれのうなぎが一週間以内に全国に運ばれていくそうです。

直営店『うなぎ炙一徹』で提供される『坂東太郎』

有楽町駅から徒歩5分という好立地です
有楽町駅から徒歩5分という好立地です

次はいよいよ東京・有楽町にある直営店『うなぎ炙一徹』へ。有楽町駅にほど近い、飲食店が並ぶ通り沿いにあります。白を基調にしたモダンで、いわゆる“うなぎ屋”らしくない佇まいは、大切に育てた『坂東太郎』を丁寧に調理して、お客様に食べていただくアンテナショップとしての役割はもちろんのこと、うなぎ文化をあまり体験していない若者や女性にも、気軽に来店してもらいたいという6代目の想いが込められています。

英語、中国語をマスターしてお客様にそれぞれの言語で対応する6代目の高安さん
英語、中国語をマスターしてお客様にそれぞれの言語で対応する6代目の高安さん

「有楽町界隈のサラリーマンやOLさんが一人で来店してくれたり、買い物の後で立ち寄ってくれる若い夫婦や家族連れもいらっしゃいます。とくに宣伝などはしていませんが、お客様が別のお客様を連れて来てくれたり、口コミで広めてくれたりするおかげで、新しいお客様も多くなってきました。最近は海外の方も増え、自国でもうなぎを食べる台湾や中国、タイなどアジア圏の方が“レベルの違うおいしさ”だといってくださいます。旅行中の欧米の方たちも、インターネットで知ったので食べてみたいと来店してくださっています」と高安さん。

カフェを思わせる和モダンなデザイン。1階2階がテーブル席、3階は個室の円卓となっています
カフェを思わせる和モダンなデザイン。1階2階がテーブル席、3階は個室の円卓となっています

SNSなどによって『坂東太郎』のおいしさは着実に世界へと拡散し始めているようです。
今後は、世界にうなぎのおいしさを伝えるために「『坂東太郎』とともに職人も一緒に海外へ進出したい」と、いずれは忠平を担う高安さんの視界はすでに世界をとらえているようでした。

注文を受けてからさばき始める

それでは、『坂東太郎』の蒲焼きをお願いします。どんなふうに調理されるのか、特別に4階の調理場で完成するまでを見学させていただきました。

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1.
うなぎをさばいて切り、串に刺す
生きているうなぎをさばくのは難しく、熟練の技が必要なのだそうです。

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2.
素焼きする
ここで焼くことで臭みがない、おいしい蒲焼きになるそうです。

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3.
15分くらい蒸す
ふっくら仕上げるために蒸しの時間もうなぎの状態によって調整するそうです。

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4.
タレをつけて焼く(一番焼き)
とくに一番焼きの焼き方が、蒲焼きの味の決め手になるそうです。

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5.
さらに2度繰り返す(二番焼き・三番焼き)
繰り返すことで中まで味がしみ込み香ばしさも増すそうです。

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6.
焼き上がったら串をはずして、ご飯にのせたら完成
ご飯にもタレをかけます。タレは開業してから継ぎ足して使っているそうです。

こうして完成するまで約40分。その間に肝焼きなどをつまみながら日本酒を飲むのが、粋な待ち方なのだとか。

濃厚な味わいも栄養価の高さも秀逸

うなぎにはない栄養素のビタミンCを漬物で補い、栄養バランスの良いセットになります
うなぎにはない栄養素のビタミンCを漬物で補い、栄養バランスの良いセットになります

いよいよ実食です。すでに焼いている時の香りで食欲が全開になっているところに、お重セットが用意されました。いただきます!
まず、うなぎに箸を入れるとふわっとして皮までもほろりと切れる柔らかさ。そのまま口に運ぶと、ふっくらきめ細かな身と焼き目の香ばしさ、濃すぎないタレが調和します。口の中に広がるうま味と脂の味が濃厚なのに、脂っぽさが残らずあっさりした後味です。なんとも至福のひととき。

「肝焼きを食べながら、蒲焼きが出来上がるのを待つです~ 」(こくさん)
「肝焼きを食べながら、蒲焼きが出来上がるのを待つです~ 」(こくさん)

高安さんによると
「牛肉にたとえると霜降りです。細かなサシが入っていて、あっさりまろやかな味わいです。うま味成分のアミノ酸の一種である“アスパラギン酸”や“グルタミン酸”が天然うなぎより多く含まれています」とのことです。加えて『坂東太郎』は天然ものや通常の養殖ものよりビタミンEや魚に多く含まれるEPA、DHAなどの必須栄養素も豊富です。

「『坂東太郎』のおいしさがもっと世界中に広がってほしいです~ 」(こくさん)
「『坂東太郎』のおいしさがもっと世界中に広がってほしいです~ 」(こくさん)

こんなにおいしくて栄養価も高くなるのは、やはり5代目から聞いたエサへのこだわりからくるのでしょうか。
「エサそのものの品質と与え方、養殖池の水質、そして通常の養殖うなぎが半年ほどで出荷するのに対して、ゆっくり1年かけて育てること。これで95%は決まりますね。あとの5%は企業秘密です」

こだわりの詰まったブランド食材

“お客様においしいうなぎを届けたい!”という思いから始まった千葉県のブランドうなぎ『坂東太郎』。「すべてにおいて“手を抜かないこと”が私のプライドです」という高安社長の言葉がとても印象的でした。ぜひみなさんも、こだわりの詰まった『うなぎ坂東太郎』を食べてみませんか?
各地域には、まだまだたくさんの隠れたブランド食材があるはずです。今後もMogu・Maga編集部は、全国のブランド食材を見つけてご紹介していきます。

(Mogu・Maga編集部)
取材協力:忠平うなぎ炙一徹